nyaro さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
今見てもまったく色あせない名作です。
1970年の作品ですが、ストーリーそのものはまったく古さを感じさせません。また、アニメそのものの出来が良くキャラデザが優れているので、作画が古すぎて見ていて辛いということもありません。70年代のTVアニメ作品では数少ない今見ても全く問題のない作品だと思います。
本作はまさにスポコンの基本構造・ベーシックと言えます。競技との出会い、支えてくれる人々、ライバル登場、動機、修行と実戦を経て、最終決戦へというフォーマットを見事に確立した、素晴らしい作品です。今回は力石編までしか再視聴しませんでしたが、50話以上ありますが数日掛けてですが、全部見てしまいました。本当に面白い話です。
テーマ的には貧困とかまあいろいろあるでしょうが、そんなのはどうでもいいです。とにかくジョーVS力石を軸にしたヒューマンドラマを楽しめばいいと思います。
エピソードでは「あしたのために」のハガキと、力石の減量シーン。物語を象徴するこの2つのエピソードは本当に見事でした。
なんといっても、同時期で同じ梶原一騎原作の「巨人の星」と違い、魔球的な要素がありません。そして、モチベーションがライバルであるというストーリーの骨格が見事にジョーと力石の2人のキャラを描き出します。
ジョー、力石、丹下のキャラ配置は後の「ガラスの仮面」のマヤ、亜弓、月影先生を始めとしたマンガの基本フレームになって行きます。
そして、サブキャラでは白木葉子です。このキャラは本当に素晴らしかった。白木は結果的に男2人を手玉にとって2人とも不幸にしたのか、それともどちらにも気持ちは届いたけど、ボクシングと言う競技に男2人をとられたのか。彼女自身が2人の男にボクシングをやらせただけにどういう気持ちなのか。この白木がいるおかげで、作品に感情移入できるし、人間味が出るし、華やかで、救いがあるものになりました。
その一方で、下町の子供たちとかはあまり機能していなかった気がします。ジョーの家族的な位置付けとして、帰る場所のような象徴にする気だったと思います。特にあの小さな女の子ですね。ただ、物語の本筋があまりに力強過ぎて、その辺はかすんでしまっています。
ためしに映画も見たんですけど、やっぱりスポコンは積み重ねが大事です。「エースをねらえ」もそうでしたけど、やっぱりスポコンは最低2クール、できれば4クールくらいかけて丁寧にTV版で見ないと感情移入が弱くなります。
映画版はレビュー書くほどでもないので、ついでに言っておくと主題歌の「美しき狼たち」はとても良かったですが、それだけです。コミックスあるいはTVシリーズのダイジェストとしての意味しかない気がします。