剣道部 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
十人十音
[文量→中盛り・内容→考察系]
【総括】
青春弓道アニメの2期。「流石、京アニ」という、安定したクオリティですね。
基本は、男子高校生の爽やかな青春と友情といった感じですが、同じく武道をやっている身からすると、武道としての要素もしっかりと描かれていて、充分に楽しめました。
三期も期待ですね!
《以下ネタバレ》
【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
特に感動したのは、4話目。
地方大会を機に、自らの射形を見失ってしまった湊が、自分と向き合い、乗り越えようと努力する話。
ゴム弓を命じられた後のカット。本来、必要とは思えない、野球部のノック。その打撃音がやけにリアルだった。
そこで、「ハッ」と思い、以降、音に注目しながら、作品を観ることにした。
すると、本作には様々な素晴らしい音があることに、後ればせながら気付いた。
ゴム弓の軋む音、スマホのマナーモードの音、雨粒が地面を叩く音、自販機から落ちる缶コーヒーの音、踏み切りの警告音、掃除機やタイピングの音、カップがひっくり返る音。
本作のタイトルは「弦音」だから、弓道に関わる音はこれまでも注目してきた。選手一人一人の「弦音」は全員違うし、的に当たる音も、一射ごとに変えていた。それは気付いていたけれど、ここまで、色んな音にこだわって作っていたとは気付かず、聞き流してきた自分を恥じた。
弓道は、武道の中では珍しく、対人競技ではない(他は、空手の型くらいかな?)。
だからこそ、「自分の型(射形)」を追求する武道であり、その「型」は、十人十色で良い。
弓道は、求道。自分の射を、どこまでも求め、己を高めていく個人的な武道。
と同時に、「息合い」。孤独になりがち競技だからこそ、他者と高め合ってい、世界を広げていくことが重視されていた。
息合いは、「生き合い」でもあるのだろう。音楽は、全く同じ音をいくつ重ねても、美しさは生まれない。異なる音同士が重なり、調和するからこそ美しいハーモニーが生まれる。
古来、「殺人」を目指してきた武道は、どの競技においても、「活人」に変わってきた歴史がある。弓道における「活人」の理想形を見られた気がする。
本作のテーマと、弓道の競技性、京アニの技術。
全てが調和し、美しいアニメを生み出していた。
本作のシナリオには、正直、特段の独創性や、天才的な展開があるわけではないと思う。わりと普遍的な(王道の)話を、弓道という珍しいテーマでやっているだけだと言われれば、そうかもしれない。
同じく京アニの「Free」と見比べれば、似てない要素を探す方が難しいとも言える。
ただし、京アニが、「Free」で一番こだわっていたのは、水中の作画シーンだと思う。「音」にこだわる本作とは、演出の方向性が違う。
私が思う京アニの凄さは、「原作の良さ(魅力)を見抜く目」にある。
例えるならば、モデルのスカウトが、「将来どんな顔に成長するか」や「化粧映えするか」「どんな服を着せたら似合うか」を見抜いた上で、事務所に所属させる、みたいな。
この原作の、どこを磨けば、どう光るのかを見抜く目が確実で、それをやりきるだけの技術力があるから、ハズレの作品が極めて少ない。
「けいおん」「ユーフォ」「小林さん」「エヴァガ」と、全て、方向性が違うが、全て名作である。
私はP.A.WORKSも大好きなのだが、あそこは逆に、得意なジャンルや作風が特化していて、そこにハマる原作やアニオリだとめっちゃ面白いけど、ハマらない時は、なかなかフルスイングで空振るからね(笑) まあ、それも含めて、私の二大好きな制作会社なんですがね(笑)
京アニには、これから先も、素晴らしい原作を見抜き、素晴らしい作品を創り続けてほしいと思います♪
{/netabare}