てとてと さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 2.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
児童文学の異世界ジュブナイルで魅力が多い良作だが、ヒロインの交流ドラマがやや惜しい
内気な女子小学生と奔放なおばさんが、異世界を旅する冒険ファンタジー。児童文学原作で115分の劇場アニメ。
※作品データベース様より若干修正
【良い点】
あんまりシリアスな戦闘やギスギスが無い、女の子向け児童文学らしい、ユルい冒険ファンタジー感。
キャラ間のやりとりがコミカルで全般的に楽しい。特にチィちゃんのセリフと、ヒポクラテスがハエにされる件など随所に笑い所あり。
主人公アカネちゃんが異世界を旅して成長して帰ってくる、行きて帰りし物語の基本に忠実。
ストーリーや世界観説明が丁寧で分かりやすい。
直接的な戦闘シーンが皆無でありつつ、敵コンビの危険なアウトロー感で適度に緊迫感出してたり、
砂嵐や吊り橋自動車渡りなど適度なハラハラ感で飽きさせず。
主人公のjCよりも、子供っぽく無邪気なおばさんの魅力が高い。大人も冒険できるんだ的な感じが良い。
小人のピポ可愛かったり、敵コンビもキャラ立っている。主人公以外が個性的で魅力的。
異世界は蒸気機関や機械文明でありながら、昔ながらの穏やかな生き方が息づく、一種のユートピア。
近代文明批判な側面もあれど、あまり社会派臭は感じさせないユルい塩梅。テーマの弱さはむしろ好ましい。
自動車で旅しながらバリエーション豊かな自然のファンタスティックな異世界を冒険する、ただそれだけで楽しい。
明快なテーマやメッセージは乏しいが、自然体で作品に込められた理想郷を体験させてくれるタイプ。
ジュブナイルとしては主人公に主体性が弱く、明快な成果が見えづらいタイプだけど、
冒険の日々はアカネちゃんをいつの間にか成長させていたのは違和感無い。
村長母のセーターのイベントとか、こういう無駄に見える回り道の積み重ねがあながち無駄ではない。
この世界の人々の価値観や、子供だったアカネの視野を広げるきっかけになっていくので。
実はアカネ母も…は異世界ジュブナイルの王道お約束だし、本作の場合既に大人であるチィちゃん視点でも純真さ失わない良さを見せた。
意地悪く見ると曖昧な物語だけど、曖昧さを許容するのが児童文学かも。少なくとも悪い物語ではなかった。
作画は綺麗でファンタスティック。自然と機械文明の理想的調和や、細かい生活感など丁寧。
キャラデザはクセがあるが悪くない。
【悪い点】
アカネちゃんが地味。巻き込まれ型で主体性が中々見えず、存在感でチィちゃんに食われていた。
道中のイベントでも積極的に交流出来ていないため、成長の成果が見えづらい。
好意的に見れば曖昧であっても成長の糧に出来ていたと分かるけれど、分かりづらくはある。
終盤のセリフによる総括も唐突感。
救世主たる立ち位置も活かし方が終盤で唐突。
敵の王子との交流掘り下げがほぼ無いまま共感していく流れも唐突感。
もっと早い段階で王子と敵対含めた交流積むべきだった。
王子が異世界破壊?したがっていた動機も理由は分かるものの、やはり唐突感。
王子だけでなく、ピポも含めて心の通った交流が乏しいため、別れの惜別感も弱い。
良い点と裏腹、戦闘や交戦イベントがほぼ無いため、道中ドラマが地味。
声優陣は棒読みだけど許容範囲。声は慣れる。とはいえ、アカネ役はjCぽさが薄かった。
キャラデザのクセは悪くはないが、萌えは無い。
【総合評価】6~7点
児童文学の異世界ジュブナイルとしては魅力が多い良作だけど、アカネちゃん関連のドラマが弱いため地味に感じる。
アカネちゃん視点のドラマがもっと良ければ「とても良い」だった。
地味だけど自分好み。評価は「良い」
【余談】
ベルリンの壁が崩壊する前の物語だとセリフで分かる。
こういう時代性感じさせる要素好き。
(ステレオタイプな恐れを承知で)女性的な脚本というか、明快さや、論理的にテーマを設定するのではなく、
曖昧なフィーリングの中で大らかにいつの間にか得るモノがあれば良し、的なタイプの作品。
例えば2021年TVアニメ「白い砂のアクアトーブ」も、細かい点が至らないけれど、全体通してまぁいいか、と許容できる。
全くタイプの異なる作品だけど、こういうユルい女の子成長劇も悪くない。