ひろたん さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
正義、間違い、そして、前に進むと言うこと
ガンダムのTVシリーズを観るのは初めてです。(OVAのポケ戦は観たことあります。)
私は、もともとガンダムは観ないのですが、なぜか今作は観て見たくなりました。
なぜなら、巷で話題の「トマト潰し」事件が気になったからです。
さて、どんなものでしょう?
この物語は、本編の前にまるまる1話分のプロローグがあります。
最初からとても面白いじゃないですか!
これは、続きがとても楽しみです。
それに、クオリティもとても高い!
と、思いきや、本編になると少しクオリティが落ちる感じですかね?
いや、実際は、本編もそれなりにクオリティは高いのだと思います。
しかし、プロローグの方がそれ以上に高すぎるだけなんですよね、きっと。
■ガンダムに魔女!?
{netabare}
最初から疑問符でした。
ガンダム=戦争の道具=機械=科学って思っていたので「魔女」っていったい!?
非科学的なものを使うなんて、ついにガンダムもネタが尽きたのかって心配しました。
でも、こう言った戦争に非科学的な呼称って珍しいものじゃないんですよね、きっと。
最近でもTVで報道された「キーウの幽霊」とかもありましたし。
戦争は精神の極限値を超えるので、"超"精神的な発想がでてくるのかもしれません。
{/netabare}
■ミスリードと言う名の壮大な罠
{netabare}
プロローグでは、ある女の子が登場します。
その子は、ガンダムとシンクロできるすごい能力を持っていました。
その能力は、普通の人には難しいとされているものでした。
その後、事件は発生します・・・。
そして、時は経ち、その子が成長し17歳前の女子高生として登場したのが本編です。
と、ここまではいいのですが、
物語の序盤にプロローグで起きた事件は「21年前」の出来事と言っていました。
「ん?、んん?」
なんだか計算が合わなくないですか・・・?
しかし、物語は、このことには特に触れずにどんどん進んでいきます。
一視聴者としては、嫌な予感しかない状態で物語を見続けないといけません。
なかなかやってくれますよね。
{/netabare}
■ガンダムのことが少し分かったかも
{netabare}
ガンダム初心者なので、ガンダムについて深く語ることはできません。
しかし、初心者なりにガンダムについて分かったことがあります。
まずは、モビルスーツと言うロボットは、主役ではありませんでした。
あくまでも物語を語るための手段でしかないと言うことです。
つまり、ただの戦争の道具です。
確かにロボットアニメなので、ガンダムを見せるシーンは多いです。
しかし、そこで描かれるのは、ガンダムに搭乗する人物の苦悩のドラマでした。
では、なぜ、そこにドラマが生まれるのでしょうか?
それは、敵味方には分かれていますが、勧善懲悪ではないからです。
つまり、どちらも自分の正義のために戦っているからです。
ロボットで悪い怪獣や宇宙人をやっつける的な話ではないのです。
また、「勝てば官軍負ければ賊軍」と言う言葉があります。
しかし、ガンダムは、それでは割り切れないところが、やはりガンダムなのです。
視聴者としては、ガンダム=味方=正義で、それと戦うものは敵=悪と考えがちです。
しかし、悪と思っている方も実は自分たちの正義のために戦っているだけなんです。
今回のガンダムは、そのガンダム=味方=正義と言う考えを見事に打ち砕いています。
そうです、敵もガンダムなのです。
つまり、ガンダムから味方がとれたのです。
そして残るのは、ガンダム=正義と言う概念だとしたら・・・。
敵も味方もどちらも正義なのです。
そもそも、ガンダム=正義と言う考え自体が間違っているのかもしれません。
なぜなら、ガンダムは、あくまでも、ただの道具なのです。
そして、今回、その敵と味方、それを示す構図は、地球民VS宇宙民です。
これがとても上手いのは、主人公率いるこちら側と思われる人々、
つまり、味方は、宇宙民であることです。
でも、一視聴者としては、当然、地球に住んでいるので、
どうしても地球民が味方であり、正義と考えたいところです。
しかし、そうはさせてくれないのです。
主人公たち宇宙民は、地球民と戦うのです。
ここで、視聴者の心の中の葛藤をも利用しようとしています。
でも、これは視聴者に気づいてほしいことがあるからです。
それは、敵と味方であっても、どちらが善でどちらが悪ではないと言うことです。
どちらも正義なんです。
でも、その正義とは、あくまでもそれぞれの人たちの中だけの正義だと言うことです。
そして、その正義と正義のぶつかり合いがあるから、そこにドラマが生まれます。
これがガンダムだと思います。
劇中でそれを象徴する印象深いセリフが最終回にありました。
「いったい何が正しかったんだろうな・・・。」の問いに対して、
「人の数だけ正しいがあるもの、いつか必ずどこかで間違うのよ。」
とヒロインの一人ミオリネが答えるのですが、なかなか奥が深いですよね。
そして、こうも続けます。
「それでもできることをするの。」と。
このセリフが意味することは、前の回でその真意を語っていました。
「正しくっても、間違っていても、自分のやったことは取り戻せない。
なにも手に入らなくても前にいくしかない。」
個々が思う正義の違いから間違いは生まれます。
それは、人類からは、なくなりません。
そして、その間違いは、取り戻すこともできません。
だから、人類は、結局、前に進むしかないと言っているようです。
奥が深いと思います。
私は、他のガンダムは、知りませんが、どんな感じなのでしょうか・・・?
少し興味がわいてきました。
{/netabare}
■まとめ
なるほど「トマト潰し」事件は、とても衝撃的でした。
この物語では、場面ごとに登場するトマトがキーになっていましたよね。
最初は、ミオリネのトマト作りを主人公のスレッタが手伝うところから始まります。
スレッタとミオリネの心の成長と絆がトマトに投影されていたんだろうと思います。
その中での「トマト潰し」事件は、なかなかでした。
(実際には、トマトではないんですけどね・・・。)
それにしてもこの場面は、名場面だと思います。
なぜなら、正義と間違いを天秤にかける言わばこの作品のテーマそのものだからです。
TVシリーズとしては、私としては、初めてのガンダムでした。
昔からとても人気があるシリーズと言うのも納得できた気がします。
この作品は、多少子供っぽいところもありますし、ご都合主義的な展開も多いです。
しかし、最初は、わきあいあいとして、ほのぼのとしているのに、
気付くといつの間にかシリアスの真っただ中だったと言う展開が好きな人には、
面白いと思います。