ひろたん さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
レンダってナンダ?
夏だ、海だ、サマータイムレンダだ。
と、言うわけで、去年、惜しくも観ることができなかったこの作品。
観るなら、今ですよね?って感じで観てみました。
■温故知新
{netabare}
この作品で重要な要素をさっと列挙してみます。
孤島のミステリー、タイムリープ、人に紛れ込んでいる異形、
ドッペルゲンガー、廃病院、謎の地下空間、観測理論、常夜(常世)・・・。
実は、これらは、何ら新しいものではなく、むしろ、使い古された王道の要素たち。
他の作品は、この中の1つの要素にフォーカスしたものがほとんどなのでは?
しかし、この作品がすごいのは、これらの要素が全部入りと言うところです。
観ると分かるのですが、よくまぁ、これだけの要素を入れたなと逆に感心します。
とにかく新しい要素はないのに、それらを組み合わせることによって、
今までになかった新しい作品を生み出しているのです。
温故知新とは、まさにこのことですよね。
{/netabare}
■レンダってナンダ?
{netabare}
答えは、作中で語られます。
「レンダリング」のことです。
レンダリングとは、データ処理によって目に見える形のものを作り出すことです。
言わば、データと言う抽象的なものを画像のような具体的なものにしていくことです。
この作品では、主人公が過去に戻るたびに未来で見たことが現実化していきます。
つまり、現実を確定していくことをレンダリングと言っていました。
また、作品の中で「影」と呼ばれている異形は、デジタルノイズのような演出でした。
そして、その異形は、見たものを「スキャン」し、「コピー」します。
しかし、それには「ストレージ」の容量の制限があると言います。
レンダリングだけではなく、いろいろデータ処理的な発想でした。
画像のリアルさに大切なのは、「光源」、「反射物」、そして、「影」の3つです。
レンダリングでは、光がなければ"モノ"を見ることはできません。
そのままでは無色透明のようなものです。
光があって、反射物があって、初めてそこに"モノ"が確認できるようになります。
しかし、それと同時に必ず「影」もできてしまいます。
モノを確認できると言うことは、それと同時に影もできるということです。
つまり、モノと影は切っても切り離せませんし、そこに光が必要です。
この作品では、これらが非常に重要となってきます。
{/netabare}
■オートセーブ、かつ、セーブデータが1つしかないゲームのドキドキ感
{netabare}
たまにありますよね、こんな親切なようで意地悪なゲーム。
たった1つのセーブデータがどんどん更新されるので、
それ以前の部分はやり直しできないんです。
この作品では、タイムリープを使ってそんな演出を仕掛けてきました。
タイムリープをするたびに徐々に戻れる時間が限られてくるのです。
つまり、過去に戻ってやり直しはするのですが・・・。
その、やり直せるスタート地点がどんどん前に(未来方向)ずれてくるのです。
つまり、セーブ地点には戻れますが、それ以前にはもう戻れないのです。
この作品では、そのことを「確定」と呼んでいました。
そうなるとどうなるか・・・。
そうです、最悪の結末までの猶予がどんどんなくなってきてしまうんです。
あの時、ああしておけばよかったと言う後悔。
そして、次は間違えないようにやろうと言う緊迫感。
その両方を体験させてくれます。
セーブデータの性質をアニメの題材にするなんて、なかなか面白い発想ですよね。
今までのタイムリープ作品にはなかったパターンだと思います。
{/netabare}
■ちょっとダメな点
{netabare}
1つ目は、序盤で「影」と呼ばれている異形の実体がはっきりしてくるところです。
すると、最初にあったなんだか得体の知れないモノへの恐怖が逆に和らいできます。
もう少し引っ張っても良かったかなと思います。
2つ目は、「影」のボスがいろいろ説明臭いところが少しマイナス。
ちょっとしゃべりすぎ・・・。
子供向け作品にはよくある感じで、概念やら背景を黒幕によくしゃべらせるやつです。
ここは、あえて説明させずに物語からくみ取れるようにしてくれた方がよかったかも。
3つ目は、主人公のタイムリープ=観測確定能力が前提になっているところです。
これがなければ、物語は始まりもしませんし、進みもしませんが、要はチート。
「影」のボスが言いました。
「ゲームで何回もセーブポイントに戻って魔王に立ち向かう勇者」だと。
主人公がまさにこれ。
つまり、作品の中の現実世界(=ゲーム)の外側の能力(=プレイヤー)です。
その能力があるのはいいのですが、その必然性や納得感がもう少しほしかったです。
{/netabare}
■まとめ
この作品は古くからある王道の要素をデジタルの概念で結びつけました。
そして、レンダリングと言う解釈で新しいものへと再構成したのが斬新でした。
まさに温故知新です。
とにかく、オートセーブで、かつ、セーブデータが1つしかないと言う、
なんとも言えないドキドキ感が味わえる発想がとてもよかったと思います。