かがみ さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
戦後ロボットアニメのもう一つの総決算
『新世紀エヴァンゲリオン』の社会現象化に伴い発生した第三次アニメブームからは同作への返歌的な多くの作品が生み出された。それは同時に戦後日本的な「大きな物語」の失墜に伴う社会の引きこもり化/心理主義化といういわゆる「95年問題」に対するサブカルチャーの一つの回答でもあった。そのうちの一つに数えられる本作は「95年問題」に対する回答としてTV版エヴァが提示した母性的承認(おめでとう)をより一層強化した形で提示した。作中において自身の愛する「ゲキ・ガンガー3」というロボットアニメが侵略者のプロパガンダに使われていることを知り苦悩する主人公テンカワ・アキトに対してライバル的存在であるアカツキ・ナガレが「君はもっと色々なアニメを見ておくべきだった」と諭すシーンが象徴するように、同作ではマジンガーZに象徴される70年代的ロボットアニメの文法の失効が戯画的に確認される一方で、うる星やつらに由来する80年代的ラブコメディ/90年代的美少女ゲームの構図が前景化する。そして本作が提示した母性的承認の回路はやがて90年代後半からゼロ年代初頭におけるセカイ系と呼ばれる想像力の台頭を準備することになった。こうした意味で本作はエヴァの構図をオタク系文化史の中に位置付けて、エヴァとは別の形で戦後ロボットアニメの総決算を図ろうとした作品であったと言いうるのである。