らんらん さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
あえて的を外した観点で、すごいと思った作品
原作未読。
{netabare}最終的にたどり着く【人間世界】に驚いた。
【鬼世界】から来た得体の知れぬ一銭も持たぬ人たちが温かく受け入れられ、何不自由なく生活を送っている。
つまり、この【人間世界】では人口・エネルギー・食糧・雇用などの諸問題が完全にクリアされている。
このことから〈世界政府〉が樹立されていると見ることができる。
また、居住エリアや住宅も一般市民と同じであることから人種・文化の問題もクリアされており、「文化相対主義Cultural Relativism」でも「多文化主義multiculturalism」でもなく、〈文化的多元主義Cultural pluralism〉に基づいた社会であると見ることができる。
テクノロジーは私たちの世界と変わらない。
ということは、人工衛星もあると見ていい。
しかし【鬼世界】を監視している気配はまったくなく、【人間世界】も1000年以上も前の「約束」を律儀に守っている様子。
一見すると1980年代によく見られた対比(【人間世界】=欧米、【鬼世界】=旧ソ連)のイメージだが、【人間世界】の政治・経済・文化の水準がまったく違う。
以上のことから、【人間世界】は、エマと同様の〈徳〉を有する人物を中心とし、ノーマンやレイと同様の〈知能〉を有する人物たちが集い作られた、「専制主義Absolutism」や「デモクラシーdemocracy」ではなく〈エピストクラシーepistocracy〉に基づいた〈資本主義社会〉であると推測する。
差別も格差もなく、誰もが安心して豊かで自由な人生を送れる【人間世界】。
アニメに出てくる近未来といえば〈ディストピア〉と相場が決まっているが、この作品の近未来は〈ユートピア〉である。
私としては、本作品の監督や脚本家の描く、近未来の〈ユートピア〉をテーマにしたリアリティを有する物語があれば、ぜひ見てみたい(と言っても、〈ディストピア〉じゃないとドラマ性もなければカタルシスもないので、絶対ヒットしないだろうけど)。
{/netabare}