なばてあ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
パターン認識のオートマティズム
原作は未読。
人間にはパターン認識というモノが備わっていて、ふたつの対象に似通っている部分があれば、それが目に付くようにできている。すでに人口に膾炙しているとおり、本作の物語、世界観、登場人物はべつの複数のアニメ作品にとっっっても似通っているのはまちがいない。わたしは自分のパターン認識を恨みながら、最後まで見ることになった。
とはいえ、一部のヒトが舌鋒鋭く非難しているように、わたしは非難したいわけではない。つまり「オリジナリティ」そのものに、わたしはなんら価値をみとめない。本作には「オリジナリティ」がほとんどないのはたしかだけれども、それが本作の価値を決定的に毀損しているわけではないと思う。むしろ「オリジナリティ」の価値を声高に主張する本人の「オリジナリティ」が決定的に欠けていることのほうが問題だ。
さて、以上を前提として、あらためて本作をふり返ると、ふたつの点が興味深い。ひとつは「元ネタのあからさまな匂わせ」と「ポストモダン的な再構成の妙」である。後者は比較的語りやすいだろう。端的にいうと、上手いと思う。過去の名作群からいくつかの重要な要素を抽出し、それをパズルよろしく現代的な雰囲気で組み合わせて辻褄を合わせるのがとても上手だと思う。
「元ネタ」をまったくしらない視聴者には、とっても評判がいいこともあきらかなようで、これはわたしにとっていっそう興味深かった。パターン認識さえ宙づりにできれば、きっとこの作品のマゼモノ感はさほど鼻につくこともなく、すんなり腑に落ちるらしい。そんな経験をしてみたかったし、そういう人生もありだったなとちょっと思う。
でも、ちょっとだ。
前者については、作者の問題なので、まあわたしがここで論じても仕方が無いが、ただ昨今のポップカルチャーにおいて、新作にここまでパクリ感を充満させるというのは、一周回ってあたらしいし、めちゃくちゃ挑発的だし、なんだったら著作権にたいする根源的な懐疑を表明しているのではないだろうかとさえ、思う。わたしが本作品鑑賞時にずっと心が動いていたのは、ここに対してだ。自分がなにを見させられているのか、にわかには判別がつかなかったのだ。あまりにも、あからさますぎて。
「元ネタ」といえば「{netabare}涼宮ハルヒ{/netabare}」シリーズや「{netabare}物語{/netabare}」シリーズ、単体作品では『{netabare}俺ガイル{/netabare}』なども挙げられるだろう。ただし、これらの作品に対する「オマージュ」としては、評価できない。「オマージュ」ならあまりにもあからさまで下手すぎる。なら「パロディ」だろうか。「パロディ」としては高性能だと思う。ネタ作品としては超一級の評価に値する。
ただし、世評はそうなっていない。「青ブタ」シリーズをネタ作品とみなす評論は、さほど一般的とはいえないようだ。だとすれば、わたしは自分と世間の距離を意識せざるをえない(たとえば、サクタくんのように?)どうみても「パロディ」作品なのに、それを素にストレートにうけとめて「感動」してしまう行為は、わたしにはどこまでも野暮で粗野に見える。アニメ鑑賞って、もうすこし洗練された行為ではなかったのか。
・・・・・・もちろん3話や6話、13話はとてもおもしろかった。それなりにヒリヒリとした肌感覚があって、上手いなあと思う。作者の「上手さ」が意識にのぼる時点で、「パロディ」としては超一級だけど、「青春ラブコメ」としてはやっぱり、こう、のめりこめない。そう、いろいろ、自分の斜に構えたがりな感性をなだめすかして、ニュートラルに鑑賞しようとしても、結局、パターン認識の網から逃れられない。
一方。作画はすばらしい。キャラデもすばらしい。原作者の力量では天と地ほどの差もあるほどに、物語の出来がずば抜けている『{netabare}俺ガイル{/netabare}』と比較すると、あきらか。この点においては、アニプレ護衛船団の水も漏らさぬ完璧なクオリティコントロールは絶賛するほかない。個人的に、2023年時点でもっとも見る価値の高い作画はCLOVER WORKSのそれだと思う。
というわけで、作画に引きずられて、もうすこし見てみようと劇場版に手を出したところ、上記の感想がややひっくり返る結果となった。もろもろ興味深い。
衝撃:★
独創:☆
洗練:★☆
機微:★
余韻:★☆