nyaro さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
前半は素晴らしい名作。全体でも炎上を忘れ無料なら秀作です。
前提条件として、無料のアマプラで見ました。つまり映画館に足を運んで有料で見てないです。それであれば、悪くない話かなとは思いました。特に前半は名作「100日後に死ぬワニ」のダイジェストですから当たり前といえば当たり前です。
サクラの花びらが象徴していますが、本当に人生はいつ終わるかもわかりません。100日後に死ぬという前提があって見るから、我々は主人公をもどかしくも愛情をもって見守りますが、しかし、それは我々でもあります。つまり禅ですね。
悟る必要はないと思います。いつ死ぬかもわからないからやるだけの事をやろうとまず取れます。
100日後に死ぬというネタバレから始まる、一人の青春を描いた4コマ漫画は本当に名作だったと思います。後悔とか前に進む、ユメをかなえる、就職する、もちろん恋愛もです。
しかし、その一方で死ぬというのは誰にでも訪れることであって、友情をはぐくみ、恋愛になやんだ、彼の青春はいつ終わりが来ても生きた証です。死がそこにせまってたとしても、自分らしい日常を送ることもまた大切だということでもありそうです。
石田三成の柿の逸話を思い出したりもします。死刑を前に身体に悪いからと好物の柿を遠慮する男の境地です。この覚悟とは表裏の関係にはなりますが、死と生き方を考えるきっかけとなるのは共通です。
(この話をひょっとしたら助かるかもしれないからという解釈がありますが、そういう浅いことではないではないのは明らかです)
本作前半と四コマ原作はすばらしい話でした。
としたところで、後半ですね。カエルです。ワニの存在をしらない彼が死を悼む仲間にはノイズになるわけです。ですが、彼もまたワニと違う人生を送っています。事情をしらない彼も一生懸命青春を送ろうとしています。
それはつまりワニ君に捉われていた仲間・グループの復活のきっかけにもなりました。その点においては悪くないと思います。思いますが、どうでしょう?
ワニ君の人生を見た後の広がりに、結論を付けられてしまった感じはあります。ワニ君そのものを描いているわけではないし、死の悲しみとは本人ではなくて、残されたものの想いだという意味においては良いと思いますが、余韻というかせっかくの問いかけが少し具体的になってしまいました。
続編として4コマで見せられたら、まず反発はすると思います。映画館に足を運んでお金を払った人もなんだこれは?になると思います。
繰り返しますが、私は無料サブスクです。ですので、純粋にアニメの出来だけで言えば、実は前半は90点、後半でも70点くらい。平均で80点くらいはつけて良いストーリーではないか、と思いました。
やはりテーマ的な奥深さ、文学的な余韻、特に前半については評価せざるを得ないでしょう。映画の題名はちょっとおかしいですけどね。
メタ的に電通案件というネット上の炎上が不幸な作品ですが、見る価値は十分あると思います。