Mi-24 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
自分の命を大切に出来ない、愚者の末路
TV版『青春ブタ野郎は
バニーガール先輩の夢を見ない』の最後に出てきた謎の女が何だったのか、この作品を見て理解出来た。
謎の女、大学生版の牧之原翔子。この女は色々とやってくれる。
「翔子が全力で隠蔽していたにも関わらず、梓川咲太の鋭い洞察で真実にたどり着いてしまった」なら、仕方がないと思う。
しかし実際の翔子は、様々な「匂わせ」はするし、簡単に真実は喋べるしで自分が生き残る事に全力だった。
翔子は咲太に「私の死は仕方がない事だから、自分を責めないで欲しい」と言っていたが、「嘘つけ!本当にそう思っているなら、咲太の前に姿を現さないように努力しろ!」とツッコミたかった。
でも自分の命は大事だから、咲太が事故死するように翔子が誘導していても、仕方がないとは思う。
そして勘違いヒーローの梓川咲太。
自分の命を大切に出来ないような者は、誰も救えないし、誰も救われない。
それを身をもって証明する咲太。
恐らく今までの事件(TV版の話)では、全員救済が偶然出来ていたので、今回も無茶な事をしても何とかなると勘違いしていたのだろう。
しかし、無茶な行為の代償は到底許容できるものではなかった。
取捨選択が出来ない勘違いヒーローの梓川咲太は、絶対に失ってはいけないものを、最悪の形で失う。
「自分が犠牲になれば、誰も傷付かずに丸く収まる」
桜島麻衣が言った事を、何一つ理解していない咲太の残念な思考。
身勝手な自己犠牲が、残された者をどれだけ深く傷付ける残酷な行為なのか。自分自身が当事者に成る事で、ようやく理解する梓川咲太。
私はこのまま、愚か者の末路
「梓川咲太が地獄の底でのたうち回る終焉」
でもいいと思った。
なので、この物語りの終わりが「全員助かりました」はご都合主義が強すぎて不満が残る。
但し、厳しい現実を思い知った咲太が
「物事に優劣を付け取捨選択をする」
ことを覚えて
「牧之原翔子の救助は諦める」
選択が出来たのは凄く良かった。
この作品を見ていて、ナショナルジオグラフィックのドキュメンタリー『臓器の闇市場』を思い出した。
番組は、コロンビアとメキシコの貧困者を殺して臓器を奪い、アメリカの金持ちの患者に移植する話しだった。
臓器ブローカーは言う
「俺は人助けでやっている。必要なものを必要な場所に届けているだけだ」
移植を受けた患者は言う
「私はまだ死にたくない。助かる為に大金を払ったが、私が生き残りたいと思うのは悪いことか?」
「あんたが私と同じ立場だったらどうする。助かる方法が有ると知りながら、来ることのない臓器を待ちながら死ぬのか?」
「臓器の出所に付いては考えたくない。やめてくれ!」
番組では臓器提供待ちで、亡くなっていく人達も紹介していた。
この世では、正直者が馬鹿を見る。
最後に一言、牧之原翔子は恐ろしい存在だった。
策謀を巡らし、咲太を破滅へと導く大学生翔子さんが恐ろしい。
誰の心臓でもペタペタと自在にくっ付く中学生翔子ちゃんが恐ろしい。
最後のシーンの翔子ちゃんはなぜ助かったのか?
『中国の生体臓器ビジネスと大量殺人』
を利用したと考えると、余りにも恐ろし過ぎる。