えりりん908 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
星空と、可愛い先輩と、人の心音の温もりと。
主人公ガンタと、ヒロインのイサキ。
それぞれの理由で、不眠症を抱えていて。
私自身には縁のない不眠症だけど、
高校生ぐらいの多感な時期、ストレスが原因でなくても、
夜更し癖が不眠症の呼び水になったりするの、何となくわかります。
ましてや、ガンタは、眠っているあいだに、
お母さんがいなくなって、それきり失ってしまったトラウマを抱えていて。
そしてイサキには、心臓病という宿業があり、
眠っているあいだに自分がいなくなってしまうかも知れない恐怖があって。
でも悲劇を前面に押し出すような品の無い展開にしていないのって、
そして、そんな難病に悩むイサキが飛び切り明るくて元気なのって、
それだけで、観ていて、なんだか心地がいいのです。
眠れない夜を二人で共有することになったときの高揚感。
二人で見上げた夜空の、満天の星々の美しさ。
夜、眠れないからこそ得られる喜び。
やがて星空の写真に熱中することになる、
ガンタの写真撮影が、実はいつも、
イサキを撮るときにドキドキしていて、
彼女の可愛らしさ、躍動感、生きる喜びをしっかり捉えている微笑ましさ。
きっと。
初めて、天文台で眠るイサキを見つけたときから、
ガンタの心の中に、彼女の面影は大きく占められていて。
そんなガンタの心音の温かさに触れられたからこそ、
イサキにとってガンタが特別な存在になっていて。
イサキにとっても、ガンタにとっても、
人の心音と温もりが隣にあるからこそ、
そしてそれが、ガンタとイサキだからこそ、
安心して眠りにつける。
そういう描写の細やかさが、
とても穏やかに、心に沁みてきます。
そして、二人を星空の撮影に導くシロマル先輩が、いいです。
クールで無口で、取っ付きにくい雰囲気を醸し出していて、
その実は、
チョロくて、面倒見がよくて、おまけに照れ屋さんで、
すぐに沸点に達して大声出しちゃう、
そんな可愛い卒業生。
いまどき「スケコマシ!」なんて、これ聞いたら爆笑しちゃうよw
ガンタとイサキをめぐる周囲の人たちも、優しくてよかった。
イサキのお姉さんだって、わがままで奔放だけど、
ちゃんとイサキと向き合ってる(と、思う)。
ウケガワくんやイサキの周りの女子も、一癖ありつつ、みんないい子で。
そして、ひと夏の冒険。
星空を求めて二人だけでつづける、能登半島の旅。
お互いにとって、
お互いが欠かすことのできない存在になっていることの充足。
家庭でも学校でも、過ぎる程に真面目に生活してきたガンタの、
「俺にさらわれてほしい!」という言葉の強さ。
ちょっとリアルでは恥ずかしいような、
ピュアな二人の生き様が、
心に優しく、温もりをくれた作品でした。