nyaro さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
火の鳥の中の異色作。原作の解釈をどうしたかを確認しました。
前から見たいと思ってたらアマプラにありました。というのは羽衣編というのは異色作でお芝居のような視点で表現された実験的な作品だった事と、いわく付きというか内容に問題があって書き換えられた経緯があって話題になっていたからです。
書き換えられた内容というのは、本作は羽衣伝説の形式でスタートしますが、{netabare}女性の羽衣を男が奪い一緒に暮らすことになって、結果的に子供を作ります。その子供をめぐってオリジナルでは放射能汚染云々という話になっていてそれが問題だとして、{/netabare}違う展開になっています。
その辺をどう表現・解釈するのかというのが気になっていたので、早速見ました。うーん、どうなんでしょう?まあ、説明したいことは女性がどこから来てどういう素性なのか?という事だけですので、そこは描かれていました。
火の鳥の宇宙編の望郷編に出てくる女性はイブのような存在として近親相姦を繰り返しますが、そこを意識したような話にはなっています。なお、本作は望郷編の前日譚だったとのことで、それも想起させるシーンがカットインしていました。おトキつまり「時間の人」ですから、猿田彦と対になる永遠の母のイメージでしょう。
時間と生命の循環のようなものも入っていましたし、それとは別に「業」のようなものもあったのかもしれません。鬼という言葉で人の心の中にある生存本能と人間であることの葛藤のようなものは非常に直接的に描いていました。ピノコっぽい姿になった火の鳥が解説してくれます。
ですので、火の鳥であることには間違いはないのですが、非常に寓話的であり、説明的過ぎるかなあという印象です。「まんが日本昔話」のような非常にわかりやすいと言えばいいのでしょうか。
SF的な整合性は正直取れていない気がしますが、それは含意優先ということでいいでしょう。
工夫した点は、火の鳥は猿田彦が永遠の輪廻をさまよう地獄のような業の物語です。そして原作では本作主人公のゾクは猿田彦の造形をしていません。つまり、ゾクは猿田彦ではないと思います。生まれてきた子をどう見るかでした。
ですが、本作ではゾクの造形は猿田彦です。話の結末からいって、{netabare} トキの息子はゾクだった{/netabare}という表現になっていました。そこが手塚プロとしての公式見解なら「へー」だったし、うまい話にした気がします。
ですが、評価ですけど面白くないです。そしてサプライズがあるとすれば結末ですけど、火の鳥全体の流れを知っていないとポカーンとなると思います。
正直言うと、羽衣編は原作が面白くないのでそこはあまり気になりません。原作書き換えと実験的な表現方法、そして他作品とのつながりが気になっていたので見ましたし、その点ではふーんという感じで悪くはなかったです。
評価のしようがないので、オール3にします。ヒロインの造形は非常に良かったですが、ピノコモドキが良くなかったので相殺してやっぱりオール3です。