nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
衝撃から立ち直れない。考えがまとまらず頭がグチャグチャです。
さてなんと表現したらいいのかわからないくらいのすさまじい作品でした。作品の中身をレビューするには、あまりに深すぎてちょっと混乱中です。本作を理解するには、仏教の勉強をしなきゃ、という気にはなりました。
また芥川龍之介の「羅生門」や宮沢賢治の「春と修羅」といった作品に立ち戻る方が良さそうな気もしました。
本作は、人が本来持つ「仏性」とどこまでも生きようとする野生。その対立がアシュラと僧侶、そして一人の少女の3人によって鮮やかに描かれます。その無駄のない描写をとにかく味わうしかありません。
飢饉による極限状態において食人まで含めたその描写には、妥協はありません。が、だからこそ仏…つまり生き方についての問いかけが明確になります。食べなければ死ぬ。その当たり前の枷をはめられた人間についての物語です。
人とは何かという事よりも、何をもって人になるのか?という問いかけの方が近い気がしました。
この作品の原作は当時有害図書指定されたそうですが、読んで理解してないでしょうね。思考停止状態だから残酷などという言葉で片付けるのでしょう。それこそ平和ボケもいいところです。
本来、子供は平和だからこそ残酷な世界を知る必要があります。安全な距離からでも創作物で人間の本質に触れることで、人間性について考えるべきでしょう。
そして、今は「幸せ」至上主義の世の中ですが「幸せ」などは所詮「食と性の保証」と「安全・怠惰・贅沢・刺激」の総称にすぎません。つまり今の幸せという概念は資本主義とイコールです。
だからこそこういう目を覆いたくなるような人間の本質に近い残酷さを創作物で見ることで、「ちょっと待て。幸せとか言う前に人間ってなんだ?」ということに立ち戻れる気がします。
戦争体験がある世代だからこそ描けたんだろうなあ、と思います。
そしてこの作品、演出が良くて説明を省略して話がポンポンと飛んでいきます。考えさせる作品に言葉は沢山必要ありません。
3DCGは悪くないですね。ひょっとしたら人間を描くのに、CGは極端なデフォルメがある作品の方が違和感がないのかもしれません。
まあ、すごいですね。頭がグチャグチャです。評価はとりあえず満点にしておきます。
なお、原作は多分小学生の頃、初めの数ページを読んで気持ち悪くて断念しています。まずは原作を読まざるを得ないですね。