てとてと さんの感想・評価

4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態：観終わった

鳥山明珠玉の名作待望の劇場アニメ。ファンタジーと戦車戦と友情と勧善懲悪いずれも良し

水不足に苦しむ砂漠の世界で、悪の国王軍に独占された水を求めて、元老兵と悪魔王子が戦車で活劇する。

【良い点】
細部のデティールに拘った世界観・キャラ・ストーリーいずれも完成度が高く魅力的。
水を軸に国王軍の悪事と、これに対峙していく元老兵の想いや無敵な悪魔少年の痛快さが分かり易い。
悪政風刺、人間の愚かさ、種族の偏見はいけない、友情など良きテーマありつつ、諸悪の根源一人を除いて不殺貫いたのも良い。
原作を若干改変し、ラオに殺させなかった。(るろうに剣心で鵜堂刃衛を殺そうとした剣心を薫が止めた的な)
過去の過ちに苦悩する老兵ラオや大将軍の悪事で重い割には終始痛快で気分良く清々しい。
掛け合いがコミカルで雰囲気良し。

ガールズパンツァーばりの戦車戦。
鳥山明デザインの架空戦車が大活躍、デザインや操縦描写、重力制御の架空技術や、悪魔少年の超身体能力を索敵に活かすなど、上手い。
戦車戦における無線やレーダーの重要性という硬派ミリタリーと、ファンタジーの融合が凄い。
無線の重要性は、戦闘前にラオの指示が騒音でシーフに伝わらずピンチ招くシーンなど分かり易く伏線がある。
戦車戦だけでなく、戦車を無邪気に操縦する悪魔主従が楽しそうな雰囲気も良い。
超人がいるファンタジー世界と、丁寧なミリタリーが調和していた。

往年の宮崎駿作品(ラピュタ・ナウシカ辺り)を彷彿とするファンタジーミリタリー感満載でありつつ、細かい設定にも拘って世界観構築している。
国王軍が飛行技術禁止したのは水源発見されぬ為など、随所に物語の為の上手い設定がある。

キャラクターは61歳老兵ラオ(シバ将軍)の渋カッコ良さ、悪魔王子ベルゼブブの少年漫画的な痛快さ、コメディーリリーフながら年長者の貫禄もあったシーフなど魅力的。
人間と魔物トリオのコミカルな掛け合いや、次第に打ち解けて友になっていく流れも良かった。
一度敵対したが真相を知り味方になったアレ将軍も人格者、砂漠盗賊トリオなど個性的キャラがしっかり見せ場ある。
基本不殺で善意の物語、序盤の悪党がラストのオチで壊した車修理してくれるなど後味良し。

【悪い点】
難癖気味だけど、特別強く印象に残るような名場面はあまり無かった。
ラスボスが小物でピンチの盛り上がりはやや欠いたか。
ただこれは厳しく見た場合で、全編に渡り水準以上の面白さはある。

別に悪い点ではないが、女の子が一人もいないので華が無い。
メインパーティーが老人二人に少年一人という珍しい作品。

主題歌はテーマに沿っていて悪い曲ではないが、あまり印象に残らない。

【総合評価】9～8点
短期連載だけど流石は鳥山明の名作と名高いだけはある。非常に面白かった。
評価は最高でもいいくらいだけど、最高にはちょっと物足りない「とても良い」

2023年のアニメ映画だと「金の国 水の国」に続き、砂の国舞台に水を求めて悪政と戦う話。