しゅりー さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
「ミリオンライブ!」が精一杯詰め込められた765プロの未来に繋ぐ物語
2023年に3作品連続でシリーズのアニメ公開を発表した
アイドルマスター(略称:アイマス)シリーズのアニメの1つです。
「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」に続く2023年2作品目の公開で、
8月18日(金)より第1幕の劇場先行上映を開始し、3週間ごとに第2幕、第3幕を続けて公開しました。
劇中舞台のある豊洲の映画館では第3幕公開時も第1幕~第3幕を連続鑑賞できたりと
お祭り騒ぎを起こす人気を博しています。
そして、本日10/8(日)朝10時よりテレビ東京でのTVアニメ放送が開始となります。
本作は2020年7月に白組による制作が発表されたCGアニメとなります。
初報からだいぶ時間が経ったのは発表を控えた時期にコロナ禍に突入した上、
CGの作業やスケジュールの調整などが大変だったのではと想像していました。
アフレコもアニメでのメインキャラとなる春日未来、最上静香、伊吹翼役の3人と
プロデューサー役のキャストがそれなりに同時収録を行えた以外は分散収録が多かったようです。
※以下文字数省略のため各作品のアイドルマスター表記を削ってます。悪しからず。
さてさて、アイマスブランドとしての「ミリオンライブ!」はシリーズの中では
最初のアイマスに登場した春香や千早などの所属する765プロダクションが、
新たに建設する「765プロライブシアター」で活躍する後輩アイドル達の物語です。
現在はリズムゲーム要素の大きい「ミリオンライブ!シアターデイズ」で展開中ですが、
かつては2011年のTVアニメ「アイドルマスター」を制作したA-1 Picturesのスタッフが
カードイラストを描くことが一つのセールスポイントであったソーシャルゲーム版が存在しました。
また、「ミリオンライブ!」の一部アイドルはソーシャルゲーム版展開時の
2014年に公開された劇場版アニメ「輝きの向こう側へ! 」にバックダンサーとして登場しております。
(「輝きの向こう側へ! 」までのアニメと近い世界観を共有する本作では
バックダンサーだったアイドル達が後輩アイドルの第一期生として登場します。)
改めて、上記劇場版作品とその後に制作された「シンデレラガールズ」や「SideM」、
CygamesPicturesが制作した「シンデレラガールズ U149」などの既存のシリーズは
基本作画アニメとなっていましたが、先述の通り「ミリオンライブ!」と
後に続く「シャイニーカラーズ」はCGアニメとなっています。
※「シャイニーカラーズ」はポリゴン・ピクチュアズ制作
元々ソーシャルゲーム版の頃には2015年の「シンデレラガールズ」後に
「ミリオンライブ!」が作画アニメとして制作されることを私などは期待しておりました。
しかし、その後2017年に後発ブランドの「SideM」のアニメが制作されたと思えば
A-1 Picturesが関わっていたソーシャルゲームが縮小、サービス終了して
しばらくアニメ関係の音沙汰がなくなり、ようやくアニメ化の発表があった時に
作画ではなくCGのアニメということで、正直に言えば戸惑いを覚えたものです。
※2017年頃までは作画アニメによる「ミリオンライブ!」の周年記念PVが
制作されたりしましたが、その後に制作されなくなりました。
話数も12話ということで都合39人も新しいアイドルの姿を描く物語で
それぞれのアイドルのファンが満足できる姿を描いてくれるのかという点や
薄味でリスペクトの足らない物語になったらどうしようといった不安もたくさんありました。
ただ、実際に最終話まで鑑賞したところ、確かに描写の少ないアイドルは多少いますが、
それぞれのアイドルにしっかりと役割のある脚本、演出になっており、
765プロライブシアターでのライブが始まるまでの縦軸の物語をメインに
1本筋の通った群像劇になっていたことがとても満足度の高いアニメとなっていました。
パンフレットなどのインタビューから6年前に構想を開始していたとのことで、
先述の作画アニメの周年記念PVが作成されていた時からTVアニメ化の動きが始まっていたようです。
そんな中で監督の綿田慎也さん、シリーズ構成/脚本の加藤陽一さんのような
「ミリオンライブ!」をしっかりと描いてくれるスタッフを集めて
最高の状態で制作されたのがこのアニメなのだと認識しています。
鑑賞してみると今までのCGアニメの印象を覆すような表情豊かなアニメと
リアルライブにて振付をされているMAKIKOさんやダンサーの方々が
モーションキャプチャーに参加されることで躍動感と説得力のあるライブシーンが描かれており
CGアニメとしての不安はほぼ払拭されました。
もう一声欲しかったのが、就寝時にアイドルの髪型変更がされていないような点程度です。
作劇としてもアイカツシリーズで活躍した加藤陽一さんの手腕により
キャラクター同士の一見他愛もない会話が後の伏線になっている話づくりや
ちょっとツッコミどころが多いアイカツとミリオンのとんちき展開の親和性などを感じながら
スムーズな物語の進行に感嘆しました。
また、スタッフの方のお話によるとキャラクター同士のやりとりや描写について
そのキャラクターらしい描写かどうかを何度も打合せしながら作られたとのことです。
そのおかげでキャラクターへの解像度が非常に高い、愛のある映像になっていると感じます。
さらにファンの想い出を刺激してくる演出や楽曲使用が多いことにも驚きました。
ライブやオーディションに「ミリオンライブ!」にとって
大事な会場を選んで描写してくれていたり、リアルライブの出来事なども
小ネタとして挟んだり、物語として大きな意味を持たせたりと
ミリオンライブがコンテンツとして辿ってきた10年の軌跡を感じられるような
涙腺が緩む演出がたくさんありました。
しかも、それが新たに物語に触れる人の鑑賞の邪魔にほとんどなっていないような
バランス感覚のある映像になっていると感じられます。
というわけで、上記のようなキャラクター、楽曲、コンテンツの性格などを
丁寧に描かれた本作はアイマス各ブランドの多くのファン(プロデューサーさん)にとって
間違いなく楽しいアニメになっていると感じています。
またファン目線に立たない場合には、少しくどい演出に感じるところはありますが、
全体として堅実な作りの良アニメという印象を持っています。
そのため、アイマスや「ミリオンライブ!」を全く知らない方でも
普通に楽しめる話になっていると感じられて、
もっとたくさんの方に知ってもらえればと願わずにいられないです。
堅実で魅力的なアニメとしての性格と主題歌「Rat A Tat!!!」の
「気付かれずに終わらせはしない」という歌詞から10年の時を経て
アニメ化された本作の制作に関わる方々の覚悟が垣間見れたと感じています。
アイドルやバンドなど音楽を扱う素晴らしいアニメやゲームが多く世に出ている中で
世間一般での認知度があまり高くない「ミリオンライブ!」の、
765プロダクションの未来に繋ぐ物語が紡がれるこの時に
解像度の高いアニメが制作されたことに1ファン(プロデューサー)として感動と感謝を感じています。
個人的には名作と言って間違いはないアニメと感じておりますので、
是非ご興味がある方はTV放送やAbema、アマプラ、TVerなどの配信で
お楽しみいただければとおススメします。
最後に、ここまで長文にお付き合いいただきありがとうございました。