キャポックちゃん さんの感想・評価
2.0
物語 : 2.0
作画 : 1.5
声優 : 2.0
音楽 : 3.0
キャラ : 1.5
状態:観終わった
第2話以降はまともな内容
【総合評価☆☆】
【ネタバレあり】
第1話(90分特番)がどうしようもなくつまらなかったので見るのを止めようかと思ったが、止めなくて良かった。第2話で持ち直し、第3話以降は「悪くない」と言える出来になったからである。
アニメ第1話は、原作漫画の最初のエピソードに相当する(らしい。私は、アニメ放映後に無料試し読みできる原作第3話までしか読んでいない)。この部分は、内容的にかなり問題が多い(以下、アニメ第1話のネタをいくつかバラします)。
ストーリーは、ファンの男が、応援していた女性アイドルの子供に転生するというアブない代物。冒頭、「もし芸能人の子供に/生まれていたらと/考えた事はある?」という文言が記されており、大人の知恵と前世での情報を持ったまま転生した子供が、芸能人に必要な容姿とコネを持つことの優位性を自覚して人生をスタートする物語である……かのように始まる。
しかし、この路線はすぐに破綻する。容姿とコネ程度で人気者になれるほど芸能界が甘いのならば、何の努力もせずにガキが成功するだけの面白くない話に堕すからだ。それではと、大人の知恵を活用して芸能界を生き延びる物語にしようとしても、作者が斯界の事情に疎いらしく、三文小説的な展開しか思いつかない(原作第3話を私はそう読み解いた)。私も芸能界の内情には疎いが、少なくとも、宇多田ヒカルや佐藤浩市が親の七光りだけで今の地位を獲得したのでないことは、理解している。私の知る限り、成功した人はどんな分野でも、並の人間なら途中で止めてしまうような凄まじい努力を重ねている。
原作漫画のストーリーを担当した赤坂アカは、ジャンプ誌上で同時連載となった『かぐや様は告らせたい』でも、同じパターンの失敗を犯している。名門校の秀才を主人公にしながら、優秀な学生がいかなる思考回路を有するか理解できていないことが見え見えで、実情に疎いまま思いつきでキャラをいじるエピソードばかりが続く。途中からは、秀才というキャラ設定を放棄したかのような展開になる。
漫画『【推しの子】』の場合、「アイドルの子に転生する」という設定を重視しなくなるのがどの段階からかは、わからない(原作第4話以降を読んでいないので)。しかし、途中から方針を変更し、芸能界で起きるさまざまなトラブルに、転生前の情報ではなく常識的な世知で対応する物語に切り替えたようだ。アニメ第2話以降は、そうしたまともな内容になっている。
ただし、まともとは言っても、面白いと評価できるほどではない(以下、アニメ第2話以降の内容に触れます)。
リアリティショーにおける自殺騒動のエピソードは、同様の事件が実際に起きてから日が浅いだけに、後味が悪い。原作者の言によると、日本の事件が起きる以前、アメリカでのケースを参考に構想したらしいが、たとえモデルにしたのでなくても、もう少し間をあけるべきだったろう。
作中で取り上げられるトラブルは、俳優の主導権争いなど、話題性はあっても人間の内面に迫るものではなく、芸能レポーター(今では絶滅危惧種だが)が食いつきそうな話ばかりである。悪くはないものの底が浅い。ミステリ的な要素も、読者/視聴者を喜ばせる単なるサービスとしか思えない。
ランキングなどを見ると、本アニメはかなりの人気を博している。これは、近年急増したにわかアニメファンが、内容の充実度よりも話題として盛り上がるかどうかを重視することの表れだろう。