Witch さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
独特の作画や言い回し、そして見事な伏線回収――全てが異次元でオンリーワン
【レビューNo.78】(初回登録:2023/8/20)
小説原作で2010作品。全11話。
「正直どうレビューしたものか・・・」
思案に暮れて放置してた作品ですが、「夜は短し歩けよ乙女」のレビューを書
いていると、どうもこちらのレビューを先に書いておく必要があるのかなあっ
て感じたので、重い腰を上げることに・・・
(ストーリー)
京都大学の3回生である「私」が、どのサークルに所属するかによって、その後
の学生生活、更には周囲の人にまで起こる変化が描かれている。
(「もしあの時、あの選択をしていたら」=「並行世界」で、それぞれの物語
を描いていく)
入学当初は薔薇色の大学生活を夢見ていたが、現在は四畳半のアパートで鬱々と
した日々を過ごす毎日。
できるなら、もう一度始めから大学生活をやり直したい!
そしてこんなふうになった元凶は、「小津」と出会ってしまったからなのだ!!
(評 価)
・「森見登美彦×湯浅政明」作品の独特の世界観
・この世界観どう表現したらいいものか・・・敢えて書くなら、
「ベクトルの違う『西尾維新×シャフト』みたいな?!」
・まず冒頭から「西尾語り」を彷彿させるような、回りくどさがありどこか
古風な言い回しのナレーションを、これまた演芸でも聞いているような饒
舌な語りで「私」が見事に捌いていきます。全体的にモノローグ等「私」
の語りがかなり多いという印象です。特に小津に関しては、罵詈雑言を並
べては、最後に
「これが『小津』との“ファーストコンタクト”であり、“ワーストコン
タクト”でもあった。」
で締めるのが毎度のお約束となっていますw
・また作画についても、「古都京都」を意識してか、色使いを抑えたシック
な色調と、版画っぽい(?)タッチで、こちらも独特な雰囲気があります。
・話のテンポがかなり速いので、パンパンとカットを変えて単刀直入な動き
を多く取り入れている感じ。
このように、他の作品ではお目にかかれない独特の世界観が際立っています。
・平行世界でループしているように見えて実は・・・
・主要キャラは
●私
薔薇色の大学生活を夢見て、いろいろなサークルに入るものの
・元々自らがコミュ障
・プライドが高く失敗を嫌うあまり、決断を避ける傾向あり
→ 小津の口車に乗りやすい素養がある
という感じで、毎度失敗を繰り返す。
●小津
・悪戯が大好きであり天邪鬼、他人の不幸でご飯3杯は食べられるとい
う、一見クズ人間。
・その反面立ち回りがとても巧く、人望もあり顔も広い一面も持つ。
私の行くところに出没しては、毎度負のスパイラルへと誘い込む。
●明石さん
・私の後輩で、私は密かに思いを寄せている
・理知的でクールな黒髪の乙女であり、歯に衣着せぬ物言い
・ストーリーとしては、「私」がいろいろなサークルに入り小津や明石さん
とのエピソードを描きながら、最後は失敗に終わるといったループを繰り
返すのですが、上述した「独特の世界観」と内容も奇天烈感が強いので、
最初は私も「??」という感じでした。
でも3回ほどループしているうちに、だんだんその世界に馴染んできて、
作品を楽しめるようになったという感じですね。
・人間模様も独特で、樋口師匠を始め、城ヶ崎先輩や羽貫さん等、癖の強い
キャラが多く、よりこの世界の奇天烈感を深めている感じですね。
・しかしその繰り返しの中で、実は伏線を散りばめながら、いつの間にか点
と点が線で繋がれていき、最後の2話で一気に回収していくという手腕は
本当に見事です。
上述の通りかなり独特の癖のある作品なので、視聴者を選ぶ作品ではあります。
しかし、最初はとっつきにくさがあるかもしれませんが、3話ほど観ればこの
世界観にも愛着が生まれ、それに話の展開が早く恐ろしい位テンポがいいので、
途中からはそのリズムに乗って、一気に観れてしまうそんな不思議な作品です。
それに主人公「私」についても、始めは共感できないタイプかと思いますが、
最後に何に気づきどう変わっていくのか・・・
あらゆる面で異次元でオンリーワン、「こういうアニメもあるのか!!」と私
の世界を広げてくれた貴重な作品だったといえるでしょう。