nyaro さんの感想・評価
2.0
物語 : 2.0
作画 : 2.0
声優 : 2.0
音楽 : 2.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
原作付の意味が無い。テーマがあって物語が無い。面白く無い。
題名から言って、もうちょっとスタイリッシュな話かと思っていましたが要するに成長課題でした。
要約すると事なかれ主義、長いモノに巻かれる性格の主人公が、冒険をすることで主体性を得る話です。ヒロインとの対比が叔母さんで非日常、変わったもの、不便な生活を愛するいわば旅人属性とでもいえる人でした。
一方で王子の側ですけど、ノブレスオブリージュ、つまり身分の高い人間が課せられた義務とも取れますが、家とか伝統とういう話より「失敗を恐れて努力と挑戦を放棄する」という事かなと思います。
そして魔法使いの友達同士の話もありますが、これは劣等感の話でした。
とまあ、テーマは分かりやすいほどわかるのですが、じゃあそれがストーリーになっていたか?ですね。
冒頭のイジメについて、その後の冒険で読み取れるものはあったか?叔母さんのマインドに、ヒロインは触発されたのか?王子がチャレンジを決心したきっかけは?魔法使いの少年が友情を取り戻した理由は?科学というか別の方法を試すのは駄目なのか?科学と自然の対比に意味は?敵がペストマスクをしていたのは?羊の意味は?お土産物屋の得体のしれないお土産の意味は?
ネタバレの部分は触れませんが、もっとツッコミどころは沢山あります。
伏線回収の意味ではなく含意があるかどうかを問うています。映画である以上隅々まで考えが及んでいるべきだし、楽しさだけの問題なら無駄なので編集して違う楽しさを出せばいい話です。
整合性というよりは納得感が薄いです。人物の内面の動きがまったくトレースできません。ですのでキャラに全く乗れません。
テーマを描くだけ描いて物語に変換できていない感じです。アニメ映画でテーマ性を出そうと思えば、一旦全部物語にする必要があると思います。しかも、面白い(感動や興味深いと言う意味も含めて)話にする必要があります。
面白さの為には設定やイベント、見せ方などはもちろんですが、やはりキャラがどう動くかは大きな要素だと思います。
この映画は、テーマばかり押し付けてきて、物語とキャラにまったく魅力がなくなってしまいました。
そもそもこの作品80年代の児童文学を原作にした意味があったのか?例えば「ジョゼと虎と魚たち」については、原作は80年代ですが、実存主義的な世界観の中の女性の抑圧とか身勝手な男の性のような話だったのが、アニメでは身体障碍者の自立とは?社会がすべき真のケアとは?という視点を持ちつつ優れたラブストーリーに昇華できていました。
そういう思想や社会の変化を視野にいれつつ、元の物語のテーマを換骨奪胎して、もっと優れたものに昇華しようという意図があるからこその古い原作だと思います。
最近見た中では「コクリコ坂」もそうですけど、古い作品の設定だけ持って来て、意味のない現代風アレンジをするだけならオリジナルでいいじゃないですか。しかも「バースデイ」は生まれ変わりなどの意味があるかもしれませんけど浅いですよね。
あと雪が降って蒸気機関があるなら、蒸留すればいいじゃんと思うし、そもそも蒸気は産業革命の象徴でそこで世界が停滞する意味が分かりません。止めるなら蒸気機関発明の前だと思うし、じゃあ、そこに含意があるかといえば魔法と錬金術を見せたかっただけです。
子供向けの作品だとしてもこれは子供騙しになってしまっています。子供だからこそ、本物の面白さの中にテーマを見出すと思います。
それと子供向けならせめて人物は手書き作画でやってほしいなあ。背景はCGだとしても。
オール2を基準に調整を考えざるを得ないかなあ…加点は…うーん、無し?声優さんは東山奈央さんの少年の声は良かったですが、作品の水準からいってあまり加点したくないなあ。
本当に疑問は、これは作家性で監督とか企画者が「こういう話が作りたい」という気持ちから作られた作品なんでしょうか?
アニメの世界って本当に不思議なんですけど、企画会議とか脚本審査とかないんでしょうか?もし私が出資者ならラフでいいので絵コンテまではないと、怖くて金を出せません。どっかの段階で修正入らなかったの?と思いました。
追記 唯一いいなあ、と思ったのが「光る虫」でしたね。この含意と使い方は良かったと思います。