蒼い✨️ さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
男のロマンで乙女ゲー世界を上書きしてやるぜ?
【概要】
アニメーション制作:ENGI
2022年4月3日 - 6月19日に放映された全12話のTVアニメ。
原作は、「小説家になろう」に連載しているweb小説を改訂し、
マイクロマガジン社のGCノベルズから刊行されている、三嶋与夢によるライトノベル。
原作イラストは、孟達が担当し、
『月刊ドラゴンエイジ』にて、漫画家・潮里潤によるコミカライズ版が連載中。
監督は、三浦和也、福元しんいち。
【あらすじ】
外面がよく容姿も成績も良いが猫かぶりのわがままな性悪妹がいて、
その妹にずっと振り回されっぱなしな人生の今は一人暮らしの兄がいた。
兄が妹から押し付けられたのが、妹が友達と海外旅行に行くので、
持ってきた乙女ゲーを全コンプクリアのミッション。
妹の頼みを断ると母親から白い目で見られる立場に追い込まれるので断れない、
脅迫同然の手段。旅行期間中に達成するのは時間的に不可能に近く不眠不休。
しかも、その乙女ゲーは見た目はキレイだがゲームバランスが無茶苦茶で、
キャラクターには全く好感が持てない、剣と魔法とSFのRPGの世界。
異様に攻略難易度が高くで匙を投げて兄に全部丸投げして、
クリア特典を楽しもうという腹づもりの妹だった。
大事な休みを妹のワガママで潰されてイライラしっぱなしの兄は、
最終手段の課金アイテムの力を借りてまる二日費やしてクリア。
やっと終わったと気が緩んで夕食をしに外出したら、
体力と気力の限界でアパートの階段を勢いよく転がり落ちて、
兄はさっきまでプレイしていた乙女ゲーの名無しのモブキャラクターに転生していた。
貧乏男爵家の三男坊で母親が庶民で庶子のリオン・フォウ・バルトファルト。
それが兄だった男の第二の人生であるが、
このゲームの世界は極端な女尊男卑社会のため、リオンは全く嬉しくなかった。
15歳になったリオンは、リオンの父親でもある夫に対しても傲慢な貴族出身の本妻によって、
結婚回数7回で夫は全員戦死している遺族年金狙いの50歳の変態ババアに、
再婚相手として売られそうになる。
リオンはゲーム知識を駆使してゲームヒロインに先回りして未攻略の遺跡で、
古代文明の遺産である超科学兵器のロストアイテムを回収。そして財宝を入手。
その冒険者としての功績で望まぬ結婚を回避し、
乙女ゲーの舞台である学園への入学を勝ち取ったリオンだった。
学園は貴族の婚活の場所でもあり、男が女に媚びを売りまくるこの女尊男卑の世界では、
例外的にゲームヒロインの攻略対象キャラである王太子らイケメン5人だけがチヤホヤされていた。
片や女子には蔑まれて、この乙女ゲー世界の理不尽さに怒りを募らせていくリオン。
だが、なにかがおかしい。イレギュラーな存在は本来はモブキャラなはずのリオンだけではなく、
リオンが知らないところで本来のゲームの設定とはキャラクターの人間関係に違いが生じていた。
未来の嫁と金と安泰を得るためにゲーム知識と回収した課金アイテムの力での活躍で、
モブらしく生きていきたいとの当人の願望とは別にリオンは成り上がっていくのだが、
それはゲームキャラクターたちの人生にも大きな影響を与えて、
ゲームシナリオから大きく外れてゆく結果をもたらすのだった。
【感想】
原作者の三嶋与夢氏の別作品には同じくロボットに搭乗して戦う「俺は星間国家の悪徳領主!」があり、
圧倒的なパワーを手に入れた男性主人公が逆境を踏み潰す活躍を楽しむのがこの作者の共通の作風で、
この作品でも乙女ゲー要素が初期設定でしか機能してなくて、
一迅社のコミックZERO-SUM作品と違って少女漫画マインドがなくて、
少年誌マインド+ハーレム系ギャルゲー的な展開に爽快感を覚える男性向け作品となっていますね。
モブだったはずの主人公のやってることは、自分はモブだから無理だろうと決めつけてはいますが、
恋愛的には物語の世界に入り込んでゲームのヒロインやそのライバルキャラといった、
主要女性キャラに対する男のロマンを叶えたものでありますしね。
例えると、百合に挟まる男。きらら系アニメ的女子校に交ざってきた男子生徒。みたいな異物である、
ひねくれ主人公のリオンが見てくれだけの薄っぺらい(設定の)乙女ゲーを嘲ってぶち壊す、
そのカタルシスみたいな話かと思いきや、初期でのリオンのやられ役である、
いけ好かないイケメン達にも後には挽回と改心の機会が与えられて意外と有情であったり、
そのイケメンたちを誑かしたマリエの正体が担当声優で主人公とのつながりを匂わせたり、
マリエにも逆ハーを作ろうとして好き勝手やった因果応報的な展開がある。
前世での妹のせいで性格をこじらせた口の悪い主人公による蹂躙行為で、
序盤の敵役だったイケメンたちが気の毒に思えたり、序盤の決闘でのザマア完了を乗り越えれば、
イケメンたちも恋愛が絡むと頭が悪くなり視野が狭くなり、心無い行動がリオンの怒りを買ったが、
それを除けば本当は悪い奴らでもなくヘイトを貯める展開もなく、観やすい内容であったかと?
ご都合主義的な世界観や展開も「乙女ゲーだから!」で説明付きますし、
その歪な世界観も王国の歴史に関係があったりで、知ってしまうとある程度の納得はするのですが、
この作者のやってることは本格的に魅力的な攻略対象のイケメンキャラのいない、
乙女ゲーのパロディみたいなのを下敷きにして、自分のやりたいことをとことんやってるなあ…と。
多分、作者はそのやり方しか執筆できないですし、割り切ればエンタメとして面白い作品ですけどね。
アニメに限った話をしますとキャラデザが女性キャラの睫毛の自己主張が激しすぎてすね。
色使いがケバいですし、漫画版のほうが作画が細かくて綺麗なのですが、
こちらでも漫画とアニメのメディアの違いを受容するべきでしょうか?
小説や漫画を無視した描きやすさに特化した量産型のキャラデザよりはずっと良いですけどね。
ミレーヌ王妃が漫画版のほうが何十倍も可愛いとかいった作画への不満はありますが、
そこに目をつぶれば、それなりには良作であったかもです。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。