nyaro さんの感想・評価
3.8
物語 : 2.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
2クールを無理に1クールでやった感じ。画面は最高でした。
ワクワク感と言う点では「リトルウィッチアカデミア」で培ったものを十分発揮できていたと思います。技術面でも作画・キャラデザ・美術・雰囲気は非常に優れていたと思います。
しかしなあ…なんですよね。主要なテーマの軸が結局見えてきませんでした。初めは獣人が貧困とか分断の象徴、つまり被差別民族のような雰囲気で、その中にヒロインが飛び込むことで理解が進む。そして人類VS獣人へ…になるのかと思いきや違いました。
その後も、製薬会社と宗教、アンダーグラウンドの組織などそれぞれの集団の理屈の対立で、陰謀と陰謀のぶつかり合いかと思えば、被差別民側の内部対立にも見える。友情物語と夢の実現の話、獣人としての生き方=自由か安全か等、様々な種だけはあります。最後は結局狂った獣人1人の暴走でしたねえ。
うーん、種まきで終わっちゃいましたね、全部。友情と夢問題はある程度回収しましたが、広げた風呂敷が非常に個人的な話で終わってしまいました。それぞれのテーマ性の深掘りがなく触っただけになってしまいました。
それぞれのテーマの種のメタ的な文脈が分かっているなら読み取れるものはあるでしょうが、それを視聴者に強要し、しかも「自分としては」という結論の提示を行わないのはかなり乱暴です。
そういう社会そのものを描きたいというなら、分からなくないですがなんが、散らかったエピソードをオムニバス的に見せられた感じがして納得感が弱かったです。
キャラに魅力を感じられればそれぞれのエピソード自体は悪くなかったと思います。が、中盤のキャラの対立、ヒロインと親友のところと、ヒロインとオオカミが感情的過ぎてしかも瞬間瞬間の感情表現が強すぎて、感情移入できなくなってしまいます。善意で見られれば感情は場面場面で変わるので人間的といえばそうなですけど、一方で馬鹿に見えてしまう面が強すぎました。
世界観と幹になるストーリーは悪くないんですけど、視点がいろいろ飛びすぎました。結果、テーマ性が薄くてまとまりがない印象を受けました。その他の要素が秀逸なだけにこれはもったいなかったと思います。
その原因なんですけど、この作品の脚本・シリーズ構成の方、手がけた作品が「グレンラガン」「ダリフラ」「のだめカンタービレフィナーレ」「キルラキル」「大江戸ロケット」と並べると全部2クールなんですね。2クールの内容を1クールに全部放り込んだから、こういう作品が生まれたのかなという気がします。
それと最近ちょっと「トリガー芸」がうるさく感じてきました。トリガー演出のいい面もありますが、本作では過剰さで損をしている面はあるかもしれません。
アニメーションと音楽は良かったと思います。
ですが、独特の風合いは色合いは本当によかったですが、雰囲気で終わりました。ヒロインの決意と共に色調が変わるとか、人間社会との対比のような世界観の表現の演出に結びついていればもっと深みが出たのに、と思わなくはなかったです。
ストーリーはマイナスが大きいので2と言いたいですが世界観と舞台設定で2.5.キャラはキャラデザ評価を含めて4、声優さんは演技が過剰なのがちょっと耳障りだったので3、作画は優れた技術で4.5、音楽性はOPEDの他全体的に高レベルなので4.5とします。
ストーリーは酷評になりますが、見て損したどころか1話1話は結構楽しんで見られました。でも、アニメ作品としては、特に終盤から結末にうーんと言う不満は残る、という感じです。