Witch さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
様々な色が混じり合っても「黒」にならず「虹」を描いている手腕は見事
【レビューNo.77】(初回登録:2023/8/13)
オリジナルアニメで2017年作品。全22話。
交流ある薄雪草さんのレビューの中に
「みんな集まれ!ア●ン●ャーズ!的な作風」
という何とも魅惑的なワードを発見したので「どんな作品やねん?!」という
ことで視聴してみることに。
(ストーリー)
かつてはクリエイターになることを夢見て、オリジナルの作品を投稿していた
高校生・水篠颯太だが、ある事件をきっかけに今は創作活動を中断していた。
そんな彼の目の前に突如、アニメ「精霊機想曲フォーゲルシュバリエ」のヒロ
イン「セレジア」が現れ、謎の「軍服の姫君」(のちに「アルタイル」と判明)
とのバトルを始めるのだった。
ここに更に別のゲームキャラクターの「メテオラ」が介入してきて・・・
他にも「軍服の姫君」の力により、被造物達(創作物のキャラクター)がこの
現実世界に「現界」しており、颯太はセレジアたちを始めとする被造物同士の
衝突に巻き込まれていく。
やがて事態は被造物を創り出した創造主(クリエイター)、さらには日本政府
をも巻き込む事態に発展していき・・・。
(評 価)
・「みんな集まれ!ア●ン●ャーズ!的な作風」
・アニメや漫画世界の被造物キャラクターが現実世界に大集合!
なるほど、これは的確な表現でしたね。ということで作品序盤では
★対アルタイル陣営
(颯太をはじめ現実世界の人々もこちら側)
・セレジア:アニメ「精霊機想曲フォーゲルシュバリエ」のヒロイン
・メテオラ:RPG『追憶のアヴァルケン』のキャラ(万理の探求者)
・鹿屋:ロボットアニメ『無限神機モノマギア』の主人公
(ギガスマキナのパイロットで機体とともに現界)
・弥勒寺:漫画『閉鎖区underground-dark night-』のライバルキャラ
★アルタイル陣営
・アルタイル:はじめは謎多き「軍服の姫君」
・アリステリア:漫画『緋色のアリステリア』の主人公
・まみか:アニメ『マジカルスレイヤー・まみか』の主人公
・ブリッツ:漫画『code・Babylon』の登場人物(主人公の相棒役)
★無所属(物語をひっかきまわすトリックスター的存在)
・築城院:ライトノベル『夜窓鬼録』のエピソードに搭乗する犯人
※この後いろいろな経緯で陣営を移ったり、あと数名のキャラが遅れて現
界して登場する。
物語の大枠としては、
{netabare}・アルタイルがある理由からこの現実世界を「大崩潰」させるために現界。
(被造物たちと現実ではありえない事象を起こすことで、現実世界に
大きな歪が生じ、大崩潰に至る模様)
・それに従いアルタイルの力により、各世界の被造物キャラが次々と現界。
・アルタイルの嘘(世界改変で各キャラ達の元の世界が救われる)に賛同
した者と、賛同しなかった者(後にアルタイルの真の狙いに気づき結束)
に分裂
それぞれの正義をぶつけ合いながらバトルしていくという感じになります。
・作品最大の見どころは異種格闘戦
・各物語の世界から精鋭が現界しているので、やはりメインは各キャラ同
士のバトルシーンということになります。
各キャラの持ち味を活かしながら、スピード感や迫力、それに派手なエ
フェクト等かなり力が入っているなっというのを感じさせますね。
・各キャラの性格等もしっかり描写されている
各キャラもそれぞれの世界観を背景に
「このキャラならそんなこといいそうw」
とかキャラクター付けもしっかりされていたのは、素直に驚きましたね。
・まみか(魔法少女):愛に満ちた世界
→ 「争わず話し合えばきっとわかりあえる!」
・アリステリア(女騎士):民が塗炭の苦しみを味わう世界
→ 「そんな理不尽な世界が許せない!」(騎士道らしさ溢れる正義感)
こういった一癖あるキャラがそろい踏みしているものの、これがキャラ同士
が潰し合うことなく、1つの作品の中で上手く機能しているのは見事でした。
ちょうど様々な色が混じり合っても「黒」にならず、しっかり「虹」を描い
ているという感じで、これは制作陣の手腕を評価していいと思います。{/netabare}
・創造主(クリエイター)側まで巻き込んだ壮大なドラマ
この作品のもうひつの見どころは、上述作品を創った創造主(クリエイター)
側まで物語を展開している点ですね。
(作家、漫画家、イラストレーター等)
・被造物×創造主
{netabare}現実世界に現界することで、自身や自分たちが必死に守っていた世界が実
は創造の産物だったことにショックを受ける被造物もw
そして自分たちを創った創造主には「何故あんな理不尽な物語を!!」等
モノ申したいこともあるわけで・・・
そして創造主も各自の物語に込めた思いだったり、やはり自分が描いたキ
ャラが一番という愛情だったりと、通常ではありえない異次元(?)の交
流というのはなかなか面白い仕掛けだったと思います。
(被造物から見ると自分たちの世界を作り上げた創造主は「神」であり、
現実世界は「神の世界」という価値観も面白いですね。){/netabare}
・創造主×創造主
{netabare}物語としては、アルタイルを放置してると現実世界を大崩潰させてしまう
ので、阻止しなければならないのですが、
→ アルタイルは創造環境が特殊ゆえ最強で今のままでは誰も倒せない。
ということで(詳細は割愛しますが)「アルタイル包囲網」として
・「創造主×創造主」の共闘体制。
・更にここに別ルートからこの怪奇現象を追っていた、日本政府の「特別
事態対策会議」が加わり、全面的にバックアップ。
という大きな事態に発展することになります。
共闘とはいえ、こちらも一癖ある連中が集まっているわけで・・・
このように単に被造物だけでなく、創造主まで組み込んだ多次元のコミュ
ニケーションに発展していくのですが、ここでも見事に「虹」を描いてい
ます。
多種多様のキャラを巧みに捌いていく制作陣の手腕は本当に素晴らしいです。{/netabare}
・最終決戦はどう描いても不満の声は残るのかも・・・
{netabare}「これだけ大風呂敷を広げてどう畳んでいくの?」って話なんですが、上述
の通り、「アルタイル包囲網」として、官民総力を挙げて最終決戦の舞台が
準備されます。
そこで現実世界の存亡をかけた最後の戦いが始まるわけですが・・・
個人的には正直モヤモヤするものがあります。
でもどういう結末がふさわしいかと問われれば、結構難しいんですよね。
この辺り書き出すと重要なネタバレ続出と、とりとめのない長文になりそう
なので割愛しますが、これまでに配られたカードを考慮すると、結構上手い
着地点を見出しているのかなとは思います。
ただこれだけ大風呂敷を広げてしまうと、どう描いても結局不満は残るんだ
ろうなって感じはしますね。
個人的には後述の最終話を観て、作品全体として折り合いがついたところは
ありますが、いうても本作最大の山場ですからねえ・・・
この辺りは私が語るより、本作を観てそれぞれに感じてもらった方がいいか
と思います。{/netabare}
・最終話があるからこそ、この作品は意味をなす
私事ですが、最終決戦が終わった21話時点で
「物語のメインは終った、最終話はオマケの余韻程度の話やろw」
って結構の間放置してたんですが、これは失態でしたね。
{netabare}アルタイルによって現界した被造物達ですが、彼らの物語はここで終了しま
す。(一部例外もあるが)
しかし、創造主(クリエイター)が創った作品までもが消えたわけじゃない!
彼らがクリエイターであり続ける限り、彼らが描くキャラ達は躍動し、これ
からも新たな物語が紡がれていくのです。
そしてその物語が誰かの心に届き、その人の日常をささやかながらも変えて
くれる。
またそんな彼らの姿に憧れ、新たにクリエイターを志す者がいて・・・
この最終話があるからこそ、この作品は意味をなすように思いました。{/netabare}
立ち上がりから壮大なスケールで被造物達の競演を披露し、見事な「虹」を
描きつつも、最後は現実世界のクリエイターたちに物語を回帰させて終わる
という大きな流れは、総じてよくできていると思います。
作画や音楽等もレベル高いですし。
ただ作品しては、どうしても最終決戦の配点が大きくなってしまうと思うの
で、ここをどう感じるかで作品の評価は分かれるように思います。
あと第1クールのOP「gravityWall/SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle & Gemie」
はホントよかったな。これだけでこの世界観に引き込まれるって感じですね。
またこの曲も劇中音楽も担当されたのが、澤野弘之さんという方らしいのです
が、バトルシーンなんかもセンスあるなあって感心させられましたね。
最後に本作を紹介下さった薄雪草さんに感謝 m(ᴗˬᴗ)m
(追 記)
アルタイルを観た時「シゴフミのフミカ?!」が頭をよぎったのは、多分私だ
けなんだろうなw