nyaro さんの感想・評価
3.5
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
遺伝子を科学と家族・男女という両面から見たSF作品。
原作は1975年です。日本でDNAの2重らせんという概念がSF界に広まった時期がちょうど1970年代なんでしょうか。その概念を紹介・説明しようという意図を強く感じる作品でした。
ただ、残念ながら原作においては黎明期だったせいもあって、DNAと言う概念あるいは記憶というものを完全に間違っています。ただ、この間違った概念のSFを1990年代に入ってチョイスしたのは、アニメ制作者ですからちょっとその意図は測りかねます。もう少し工夫は出来なかったんでしょうか。
テーマとしては、マッドサイエンティストの人間としての家族の情の話でした。この家族の情というストーリーが話の骨格になっています。科学は万能ではないというテーマも入っていると思います。
つまり鉄腕アトムにおける天馬博士のようなイメージです。手塚治虫氏をフォロワーである藤子F不二雄氏が意図的に鉄腕アトムのテーマをくみ取りつつ、DNAに置き換えたととるのが素直な解釈の気がします。
出来としてはサイエンス設定に瑕疵はあるものの、家族というウエットな情とDNAというドライな科学の対比や、オカルトと科学を組み合わせたところは、さすがと思わせる短編でした。
また、代謝によって細胞が入れ替わっても本人であるという視点は面白かったと思います。
原作の少女はちょっとエスパー魔美っぽく、かつ藤子F不二雄の性癖がでる妙にエロいヌードシーンもあるんですけど、キャラデザが子供っぽくヌードシーンも直接は見せなかったですね。DNAを扱ってるのになあという感じですが、その代わりのゴーギャンなんでしょう。ヌードではなく「男女」という概念のテーマ性は、ゴーギャンを入れることで強調したんでしょう。
ということで、科学設定は90年代の作品としてはどうよ?と思わなくはないですが、テーマは普遍的なものだし「遺伝子を運ぶ船」としての人間と家族、男女の面から描けているなかなかの話でした。
秀作とはいいませんが、出来がいい作品だと思います。