てとてと さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
令和のセカイ系青春劇の力作。前半とっつき難かったのが残念、通して見れば良作
異世界・異能版の漂流教室な感じ?なセカイ系青春劇?全12話。
※作品データベース様より転載
【良い点】
漂流教室を更にセカイ系に尖らせた感じの世界観が興味深い。
(死後のセカイなのでは?)(現実と時間軸がズレている?)など「Angel Beats!」彷彿とする気配感じた。
空間も時間も歪み停滞しているセカイの異常さや、少しずつ島や各人の異能の法則を探っていく。
キャラデザ含めた作画が独特でアート的なのと、楽曲も併せて雰囲気がユニーク。
人生にも他者にも諦念抱いている主人公の長良が、孤高で独特な価値観持っているヒロインふたりとの関わりで成長する。
序盤に落ちた鳥を見捨てた→最終話の行動の変化で分かり易かった。
サブキャラ含めて会話劇に独特の含みあり、とっつき難いが妙に惹かれる。
希と瑞穂どちらもマイペースで他作品では見ないタイプで可愛かった。
各話とりとめが無くカオスじみていて困惑するが、世界観の考察は置いといて、各話ごとにセカイの縮図を示し
対する長良の心境の変化や成長を見ていくと、後半スタート地点から旅立つ辺りから朧げにテーマが見えてくる構成になっている。
序盤はセカイに対し各々が得た異能でこのセカイを変えられるんだ!な万能感に取り付かれたサブキャラたちの狂騒、
ラジタニ中心にセカイの法則解き明かす事も含めて少年たちの傲慢さ、そして滑稽さを表現していると思う。
対する長良の「世界は変えられない」という諦念が、中盤のアキ先生らの介入で揺さぶられていく。
ターニングポイントとなるラジタニがこのセカイの真理の一端を知り絶望する中盤過ぎ、
絶望的な真相を知って尚、長良と希たちが帰還を決意するまでの心境の変化が独特なタッチで描かれていた(気がする)。
長良たちがスタート地点の島から漂流する後半(津田犬登場以降)の方が、
より鮮明に長良に対する寓話的セカイ系の様相を呈していて面白かった。
一貫して「世界は変えられない」しかし、それでも生きていく…
最終話はビターな感じ、決して楽しい結末ではない灰色の日常だけど、セカイと自己の折り合いを付けるに至れた
漂流と出会いは無駄ではなかった。
一抹の切なさと、前向きで爽やかな後味を残す良き青春劇だった。
長良みたいな何者にもなれない青少年に対し「世界は変えられない」「だけどぼくが選択した世界だ」
と肯定的なメッセージを、一見支離滅裂で抽象的なセカイ系寓話を通して描いて見せた。
これは2020年代の新しい形の青春劇かもしれない。
【悪い点】
作画もキャラクターもとっつき難い。キャラは皆心を開いてないというか、生々しい不気味さも感じる。
見ていて楽しいアニメではない。
ラジタニら個性的キャラは複数いるものの大した掘り下げは無く、人間味に欠ける。アキ先生とか結局何なんだ?とか。
なので群像劇を期待していると思ったより面白くならない。むしろ個性が強過ぎるサブキャラの存在がノイズになっていた感。
本作は専ら長良の成長物語なんだけど、それが分かるのが後半まで見る必要があり、初見で分かりづらい構成に難あり。
青春劇として長良一強で、その長良が地味なので作品全般が地味に思える。
長良が顕著に成長見せるのが遅く、それまでは退屈しがち。
前半のセカイ系ミステリーやクラス内政治劇で群像劇か?と惑わせる割に主人公の影が薄い。
最後までというか中盤過ぎまで見ないと作品の意図が掴みづらい。
特に4話野球回は意味不明でストレスフル、この4話で見限った視聴者が多そう。
テーマ自体はシンプルだったのを、徒に難解に見せていたきらいも。
考察勢は楽しめても、そうでない視聴者には楽しみ所の軸が複数あり戸惑った。
【総合評価】7~6点
賛否両論のセカイ系青春劇。
正直面白くはなかったけれど、最後まで見れば意欲的な青春劇として良かったと思った。
完成度は「ワンダーエッグプライオリティ」を凌駕している。
後年振り返って味わう価値は十分ある。
もう少し分かりやすさと親しみやすさがあれば一段評価上げてた。惜しい。
評価はとても良い寄りの「良い」