「スキップとローファー(TVアニメ動画)」

総合得点
80.2
感想・評価
400
棚に入れた
1184
ランキング
468
★★★★☆ 3.9 (400)
物語
4.0
作画
3.9
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

そわそわ カツカツ ポロポロ

将来、官僚になるためと、奥能登の蛸(たこ)島ならぬ凧(いか)島から上京し進学高に首席入学した岩倉美津未。
柔和なイケメンに本心を覆い隠した志摩聡介らと出会い、
心を通わせながら青春していく同名連載コミック(未読)の連続アニメ化作品(全13話)


【物語 4.5点】
視聴者のトラウマをも優しく包み込むことで、
雰囲気だけじゃない、深い共感と癒やしを与える。

和やかなムードで視聴者が安心させられ、
誰もが心の奥底に秘めている黒歴史の封印が緩む。
そこへ正論で本質を突く志摩くんのキラー発言などにより傷が露わになり、
こんな痛い青春、自分も送っていたかも?と共感を呼び起こす。

トラウマについても、えぐり出して、塩を塗って衝撃を与える感じではなく、
優しく擦って、傷口を舐め合う感じ。
恥ずかしい思い出の一つや二つ誰にでもあるよ?と許され、
最後にはハッピーな気分になり、前を向かされる。

ある種の心療内科の如き丁寧なトラウマの取り扱いに多くの人が癒やされる。
こうした手順により、心の機微を分かっているという感想に繋がっていくのでしょう。


構成は15分完結二本立て或いは30分一本立て。
ピカピカ、キラキラなどと心の繊細な音を拾ったようなサブタイトルも、
心情の取り扱いがきめ細い本作ならば好感できます。

あ、因みにレビュータイトルは私のマイベストエピソードを3つ並べただけです。
工夫がなくてスンマセンw


そわそわ……2話前半。志摩くんがミカに{netabare} 外面でアプローチして来ている狙いを見抜いた上で「もう少しを肩の力を抜いてもいいんじゃない?」{/netabare} とキラー発言を決めた場面。ここで私はこのアニメは本腰入れて見ないと!と力み始めましたw

カツカツ……4話後半。美津未が真面目で不器用な高嶺先輩のスケジュール管理に憧れる話。昔、私もカツカツな時間管理で空回ったり、緩めた時間に思わぬ発見をしたりしていたので、非常に共感度の高いエピソードでした。

ポロポロ……10話後半。{netabare} 文化祭の仕事を抱え過ぎた美津未が、自分への悪評も耳にして志摩くんの前で涙するも、間もなく立ち直る話。{/netabare} 転んだ時の立ち上がり方を教えられる良エピソードです。


【作画 4.0点】
アニメーション制作・P.A.WORKS

実写作品風の柔らかい画作りを志向。
表情豊かな、但し真剣な目が時々怖いw美津未の顔芸や、花やら星やらが踊る背景演出。
コメディシーンでは結構遊びますが、キャラの頭身変動だけは絶対しない。
リアリティからかけ離れ過ぎない配慮も、視聴者の共感を保つ隠し味。

総じて見ていて、良い意味で楽な画面だったと思います。
私にとって『スキロー』は日々の生活に疲れた時だけでなく、
主張が強い他作品の映像消化に胃もたれした時にも立ち寄って一服できる、有り難い休憩所でした。

9話のトロトロな奥能登の帰省回。
東京とは対照的な、ゆったりとした田舎の空気感。
ご当地アニメで北陸三県制覇している同スタジオならお手の物です。


【キャラ 4.5点】
こんなイケメン美少女ばっかりの学校なんてリアルじゃない。
この種の青春物に対する批判でたまに見かける、
私がしょーもないな~と呆れるアンチコメの一つw

ですが天真爛漫な本作の主人公・岩倉美津未の場合は、
スクールカースト内で上手に外面を飛ばし合うのに疲れた人々ほど、羽休めにドンドン集まってくる。

{netabare} 子役時代のトラブル{/netabare} から周囲と青春を満喫することに距離を置いていた志摩くんも、
犬のサトノスケの如く楽しそうに寄ってくる♪
美津未がイケメン美少女に取り囲まれる人物相関にすら都合ではなく、
むしろ説得力を感じてしまう。
このキャラクター何気に凄いです。


江頭 ミカ。{netabare} 昔イジメられた過去と一因となった容姿へのコンプレックス{/netabare} もあって、必死に外面を作って、学校で計算高くやろうと立ち回る。
しばしば美津未と対比され、想いを寄せる志摩くんにはそういう打算もういいからという感じで警戒されてしまう。

{netabare} 「私がムカつく奴の名前をふたつ覚えてる間に 岩倉さんは親切にしてくれた人の名前をひとつ覚えるんだろう」{/netabare}
ミカは“負けイン”臭漂うサブヒロインですが、私も“心の許さじノート”をついつい開いてしまう醜い人間なのでw
私はミカにも幸せになって欲しいと応援しています。


村重結月。外面が良すぎて女子グループ浮きがち。
久留米誠。相手を決め付け過ぎて輪に入れない。
二人の心が氷解していく様にも空気を和ませる“美津未効果”を感じます。


【声優 4.5点】
音響はナチュラルな演技を要求。
コロナ禍により分散収録ばかりになる昨今、
本作は大人数での同時収録を敢行し、掛け合いの空気感を醸成。

以前、プロの声優が見ると、そのアニメが分散収録か否かは判別できるとの話を目にして、
そんなの素人の私には分かるわけないwと驚愕しましたが、
本作は分散収録じゃないと言われたら、私でも何となく分かる気がします。
それくらい掛け合いに自然なリズムを感じました。


岩倉美津未役の主演・黒沢 ともよさん。
ともよさんがモノローグでナレーションも兼務した作品は鉄板の安定感ですね。
{netabare} 「テッテケ トコ次郎」{/netabare} で場を制した歌唱もお見事でした。

志摩 聡介役の江越 彬紀さん。
アップダウンが激しいヒロイン役とは対照的に、常に優しい声色。
触れられたくない心に上がり込もうとする兼近先輩に釘を刺すシーンでも、
口調が終始穏やかなのが怖いですw

そんな志摩くんが美津未たちと心を通わせた末に、
{netabare} 「俺、学校楽しいんだ」と青春の喜びを醸して梨々華に打ち明ける{/netabare} 演技の変化にグッと来ます。


奥能登も舞台になるアニメとあって方言にも力が入ってました。

美津未の母ちゃんやっとった能登 麻美子さんは石川のもんやし、
上手いのは分かっとるげんけど、
美津未の幼馴染のフミちゃんしとった諸星 すみれさんは神奈川のもんやし、
心配やったんやけど、訛りとか石川生まれのもんから見てもじゃまなかったわ。あんやと。

石川県出身の声優・三浦 勝之さんが方言監修としてフォローに回ったのも、
方言の再現性に寄与していたのだと思います。



【音楽 4.0点】
劇伴担当は若林 タカツグ氏。
会話劇を邪魔しないミニマル・ミュージック。そっと寄り添うような静かな心情曲。
バックグラウンドに徹する派手さはないが良好なBGM。
きらら日常系の劇伴同様、朝の情報番組、旅番組なんかで重宝されるのはこういう素材なので、
今後、意外な所で耳にする機会もあるかもしれません。

OP主題歌は須田 景凪さんの「メロウ」
穏やかに上げていく青春ソングに乗って、ゆる~く踊る美津未と志摩くんに毎回冒頭から癒やされる。
OPで踊る作品に外れなしの私のジンクスを再更新。

ED主題歌は逢田 梨香子さんの「ハナウタとまわり道」
Aqours声優ソロ活動のタイアップ曲とは結構エンカウント率が高くて嬉しくなります。
内容もりきゃこの優しいボーカルで“今日も何気にいい日だった”と歌われ、
今回も良いアニメだったとハッピーに締めくくられる。

投稿 : 2023/08/07
閲覧 : 454
サンキュー:

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