とぁいす さんの感想・評価
3.7
物語 : 5.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
とても良かった。良かったのだが。。
異世界転生は、現世で恵まれない、夢を持てない多くの人々が虚構と知りつつ縋りたくなる物語表現のひとつだが、本作はこうしたニーズから大きく外れ、リアルな転生を描く作品だ。この手の作品はあまり多くはないが、これら作品群はリアルという切り口で、グロテスクかつ陰惨なエロが入ってきてしまうものが多い。翻って本作はグロもエロも巧妙に避けられている。だが心理描写や戦闘がそのぶん非常に丁寧に作られている。この作品はテーマを追うとか、ストーリーを追うとか、無双的な爽快感を得るとか、そういういわゆる叙事詩的で派手目な展開が無いので、繊細な感性を持って、勧善懲悪的カタルシスよりも心の琴線に触れる作品を求める層に強く訴求するだろうと思う。そしてその目的はかなりの部分成功したと思う。だが逆に言えばそれ以外の層をゴッソリ捨ててしまったので、商業的な成功という意味ではなかなか難しかったのではなかろうか。訴求を維持し、さらに視聴者層を広げる工夫があれば第2期、第3期と続く可能性があっただけに、この割り切りが成功したのかどうか。全編を通して地味でどこか重苦しい雰囲気が続く本作だが、弛緩させる場面を工夫して全体感を損なわない笑いや本編に影響しないカタルシスを各話にバラまけば、もう少し商業的に成功したんじゃないかと思ってしまう。ただ原作がそういう作品ではないので、原作改変になってしまうと、やはりコア層の一部が抜けてしまうので、それもまた難しいと考えれば、この作品を商業的に成功させて続編を期待するのは、かなりハードルが高かったのかもしれない。