かがみ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
思春期における性という「異界」
本作はとある共学高校の文芸部に所属する少女たちが己の「性」に向き合って振り回される群像劇である。スクールカーストにおける立ち位置はさほど高くなく、教室の中でもぱっとしない、あるいは浮いている彼女らは、女子だけの空間でちょっとエッチな純文学を音読するささやかな部活動を日々楽しんでいたが、ある日「死ぬまでにしたいこと」を尋ねられた部員の一人である菅原の「セックスです」という衝撃の発言を契機に文芸部員たちは性をめぐる混乱に陥っていく。思春期における性的成熟は外の世界を自覚する大きな契機となる。もっとも性は身体の数だけ存在している。となれば自分の性はまだ誰にも言葉にされておらず、自分自身言葉にできるものはいない。そこで少女たちは文学の言葉の中から自分では名前をつけることができなかった自分感情を探し、時にノートに書き出し、自身の性を言語化することで自己を確立しようとする。個人が自らの生を基礎付ける「物語」を生み出す上で日常的な世界とは異なった理を持つ「異界」の視点が必要となる。こうした意味で本作は思春期における「性」という「異界」を様々な視点から描き出した作品であったといえる。