nyaro さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
アニメ技術はすごい。本作をアニメにする意味はあったのか?
今更、ノーベル文学賞の作品の内容をレビューをしてもしかたないですね。本作はアニメそのものもアカデミー賞らしいです。
どちらも政治的な思想に毒されているので権威なんてもう残ってませんが、昔の話なので多少の良心は残っていた時代だと思います。
高校生くらいで触れる外国文学としてはかなりメジャーな作品で、私もその時期に読んだ記憶があります。もちろん味わい方をしりませんでしたので感動はありませんでしたが、老人がカジキと格闘しそして戻って来て寝る、というそれだけの話ですのでひどく印象にはのこりました。
で、長じて読んでから多少は味わい方を覚えて当然感動もありましたが、さて、本作です。どうでしょう?本当にアカデミー賞に値するでしょうか?
文学作品を映像にするのが許されるか?という気はします。文字で記されて、文字の並びの通りにこちらに情報が入ってくる小説という形態と、圧倒的な情報量の映像作品ではその味わいはまったく違うものです。
確かカフカは「変身」に出てくるムシをイラスト化することを禁じたそうです。それはそれぞれが心の中で文書の通り想像してください、という事だと思います。
そして本作は多少ですけど省略や若干付け加えられたニュアンスがありますが、それは本当にいいのか?
たしか、原作には若い時分に夫婦のカジキを獲った話があったと思います。それを読んでこの航海は老人の人生を重ねるんだろうなあ、と思った記憶があります。その解釈があっているか間違っているかは別にして、私はそういう読み方をしました。それが無いので、じゃあ、この航海は何だったんだろう?というニュアンスが違ってくる気がします。
そして、アニメーションの出来も作る労力はすごかったと思いますし、アートとしていいと思います。アカデミー賞の理由があるとすればこの部分じゃないとおかしい気はします。
でも「老人と海」という作品のニュアンスとしてキューバの自然の話です。私の脳内のイメージですと、もっと鮮やかでもっとのっぺりとした色彩だったんですよね。それを厚ぼったい水彩で見せられると違和感が凄かったです。
そしてなにより、この作品の最大の文学性は文字を読んで、老人とカジキとの格闘という一人の男の人生の総括と、海という広大な広がりを想像する話だと思います。
ということで、どうでしょう?以前見た「銀河鉄道の夜」のアニメ版は児童文学として、結構長い物語を子供でも分かるように作るという役割もあるので肯定的に受け止めました。
が、本作は簡単で短くて読みやすい文体で有名です。アニメにする意味はどうだったんでしょう?