nyaro さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
一見文学でアート…でも、人間の孤独を描いただけなら凡庸だなあ。
23年7月、ユーチューブでお勧めされたので見ました。10分の一見アート系っぽい作品の様です。こういう作品は前情報、先入観があると面白くないので、ユーチューブのキャプションも読んでない状態で、勝手な感想を書きます。
この作品の内容は、決して孤独から抜け出せない循環になっています。生活はすべて満たされています。
テレビで情報は得られる。生活は保障されている。でも話し合う人間がいない。話相手を作ろうと思うと、自分自身を失う。食物がグロテスクです。
最後のシーンだけやっと外からの視点になります。宇宙を漂うロケットの内部の話ということでした。
宇宙というのは文字通りの宇宙だとするとSFということになりますし、その方向の意味付けもできますが、それでは面白くないし味わいが弱いです。また、孤独=現代社会の若者のアナロジーと取ると最後の宇宙の場面の説明が弱くなります。
男女が決して理解し合えないといも取れますが、それだとこの部屋の意味性があまり効果的だとは言えません。
となると、人間の本質としての孤独なのかなあという気がします。他人が存在するというのを知っている。他人というものは作り出されていることも知っている。だけど、本当の意味で部屋=自分自身の内部に置くことはできない。人間とはそういう循環の中に生きている。ということでしょうか。そうなると男女というのも意味性が出てくるかなあと思います。
出られない部屋、孤独、繰り返し、生きる事のグロテスクさ、言葉によって他者の存在を認識する、他者とは一緒にいられない等々がシステマチックな様子を見ると構造主義の話かなあ、という気もします。心理学者のジャック=ラカンですね。象徴界と言う奴です。難解なので私も理解しきれているとは思えませんけど。
アートとしては、まあいいですけど、狙いすぎな気もします。あえて不気味さを狙っているのかもしれませんが、ちょっとアート系の人はこういう方向性から一回離れてみたら?と思わなくはないです。
ということで10分です。意味を考えると面白いですが、しかし逆に言うと、上にあげたような内容から、思考が広がって行かない気もします。そのレベルだとエヴァのATフィールドで語られている話じゃん、と思わなくはないです。もっとパーソナルなSNSの孤独でもいいですけど、更に狭くなります。
一見、文学的で芸術的な作品に見えますが、初見で感じたことは、それほど深い話に見えません。
まあ、本当は深い話で評価されていたら、私が恥をかくことになりますが、しかし、私のような大衆に伝わらないということは、文学として機能するか?ということ、そして「その芸術性、いる?」という問いかけにもなります。
まあ、評価せずでオール3にしておきます。
このアニメの素性を後で調べて追記すべきことがあれば改めて。
追記 ちょっと調べました。
150万会再生で、2009/12/17投稿でした。hanamushiという名前でどうも花蟲という事らしいです。
第13回 文化庁メディア芸術祭 審査委員会推薦作品だそうです。
なんか「検索してはいけない」的な扱いみたいですね。ただ、WEBページは、同系統の普通のアート作品のようなので別に普通でした。アニメ表現としての作品というより、自分のアートの延長としてアニメを作った感じもしますので、テーマ性、文学性が読み取りづらいのも分かる気がします。