キャポックちゃん さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
かすかな希望が見える
【総合評価☆☆☆】
農業生産性の低かった中世北欧を舞台に、貧しさから脱する手段が簒奪しかない人々の悲惨な生を描いてきたアニメ『ヴィンランド・サガ』は、第2期に入ってかすかな光が見えてくる(制作会社は、第1期のWIT STUDIOからMAPPAに変更)。
第1期は、残虐な戦闘シーンばかりで見るのがつらい前半、人間の欲望と神の沈黙に目を向け深遠だが救いのない後半のいずれも、ひたすら暗い話が続いた。しかし、この第2期では、奴隷の身に落ちた二人の男が、残虐非道な出来事の狭間に希望のかけらを見いだすまでが語られる。平和を維持し実直に開墾を続ければ、豊かとは言えないまでも、困窮のどん底から這い出せるかもしれないという希望である。
第2期には、第1期になかった見所が2つある。一つは、美しい女奴隷の悲痛な、しかし心を揺さぶられる物語で、ほとんどメインストーリーと言えるほどの厚みを持つ。もう一つは、以前とは打って変わって肝の据わったクヌートの姿。出番こそ少ないが、私にとって第2期で最も忘れがたい。
物語が進むにつれて、暴力の愚かしさと空しさを語るエピソードが増える。挑発に乗せられた挙げ句、多くの仲間を死なせてしまった男は、涙で顔をグチャグチャにしながら、「俺にはだまって笑われる勇気がなかった」と呻く。特に感銘深いのが、{netabare}トルフィンとクヌートが対峙するシーン(第22-23話)。「(襲撃した)農場から手を引いてくれ」と迫るトルフィンに、「余こそは帝王」と切り返すクヌートは、「余の力は人智を越え、不可能を可能にする。見よ(と荒波寄せる海岸に向けて手を伸ばし)余の力であの波を鎮めて見せよう」と豪語する。これに続くシークエンスは、息を呑む圧倒的な迫力だ。アニメ芸術の真骨頂である。{/netabare}
前半はやや単調で退屈するかもしれないが、これは、終盤を盛り上げるためのお膳立てだと思った方が良い。