レトスぺマン さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
最高の感覚を与えてくれたのだから最高の評価でお返ししようじゃないか
長文のため本文はネタバレで隠します。
{netabare}
皆さんは「小中学生の頃に視聴してそこそこ良かった。あるいは、あまり面白く感じなかった」が、大人になってから見ると【最高の感覚を自分に与えてくれる】ようなものに変化する作品と出会ったことはあるだろうか?
なぜこの質問を投げたかというと、本作が自分にとってまさにその象徴例だったからである。
私がこの作品を初めて視聴したのは2003年のことであったが、その際は「普通~そこそこ良い」ぐらいのレベルの印象だったわけだ。
そしてなぜ「そこそこ良い」レベルで止まったのかを考えると、ストーリーの外枠部分しか見ていなかったことが原因なのかなとも思える。
本作のストーリーは、昭和44年を舞台に中学生の女の子「まりん」と生体兵器の「メラン」の純愛が描かれるものだが、この部分だけしか見ていないと本作の別の良さに気づきづらいところがあるのではないか。
そして、中盤~後半にかけてかなり暗いストーリーが展開されることで、まりんがいじめられる他、周りの人がどんどん亡くなっていく、精神的にも肉体的にも傷ついていく、という流れが自分のトラウマを結構刺激してくるもので、そのような描写が見ていて辛く評価を下げるに至ったのだと思う。
もっと言えば、そのトラウマは今でも消えてはいないのだが、そのトラウマの描写でさえ大人になってから見ると「見ていると辛い」という思いだけには留まらなかったわけだ。
それは、自分自身のトラウマに対する意識の変化といったことが、薄っぺらいながらも「自分が現実で体験したこと」と結びつき、これが本作品への評価が大幅に変化した大きなポイントの一つではないのかなとも思ったのである。
例えば、つらい現実から主人公まりんを守る長屋の住人・先輩・萌ちゃんの存在を例にとれば、まりんに対してとても好意的に接するシーンが多く描かれるが、それを自分に当てはめると、少なからず自分に良くしてくれた家族、親戚、友達っていたんだよなぁ、ということが思い出されると。
もっと突き詰めると本作で描かれる【出会い→別れ→再会がありそれでも悩みを抱える】…というような一つ一つのシーンが自分が体験した過去のシーンとどうしようもなく被ってしまい、それが何回も何回も繰り返されたことが、共感や救いとなって胸を打つようなものに変化したのではないかとも思える。
また、主人公まりんの育ての祖母である「モトばあちゃん」だが、ここで特筆したいのは、このキャラクターが【よくイメージされる穏やかなおばあちゃん】とは少しズレがあるということだ。
それは優しい事は共通するにしても、パワフルだったり、60歳越えても子供と一緒にジェットコースター乗ってくれたりするのはなんとなく自分の祖母を思い出す。
そういうところに共感できるようになると、より気合を入れて作品と接しようと思えるし、【作品が視聴者自身となにかしらの類似点を持っている】ことはその評価自体に関わってくるとても重要な事項だとも思えたのである。
では、最初に戻ってまりんとメランの純愛ストーリーは結局のところ何を意味しているのかという話になるが、「メラン」の存在は、「まりんを守る」ための存在であることは勿論だが、同時に「視聴者自身を守る」存在でもあるのではないか。
周りから良い事悪い事全部含めて色々な影響を受けつつも、いざとなったら一緒に喜びや苦しみを分かち合ってくれる存在。
辛い現実から少しばかり抜け出して、見たこともない世界へ連れていってくれる存在。
そんなところに「メラン」の魅力があるのだろうし、やはりこの二人の恋愛は周りのキャラクターのおかげもあって際立っている気がする。
そして、あの大量の伏線をすべて回収した上での感動的なラストで締めくくり、そこで自分が持っていた溜まりにたまった感情を全部吹き飛ばしてくれたからこそ、題名に書いた通り【最高の感覚】を得るに至ったのだと思える。
まとめると本作は昭和の雰囲気、そしてブリガドーンという世界への異世界探検、伏線回収、純愛といったいろいろな要素があるが、やはり根本には割と現実に近い「人間模様」こそが本質的にありそうな気がする。
そして、この作品は大人でも十分見れる、いやむしろ大人になってからの方が良さがわかるのではないかと感じた次第だ。
本作のような暗いストーリーを描くものには、現実逃避させてくれるもの、現実から逃れられないもの、どちらもあるが本作は後者の要素が強い。
だから、どんどん心の内に入り込んでいくようなものがあるわけだ。
しかし、心の内に入り込むということは同時に【家族・大切な人の存在】にぶつかることになり、私の人生はこれでもかというくらい薄っぺらいものではあったが(笑)、それを擬似的に振り返ると良い部分もあることに気づかされる。
そしてそこに対する思いがいろんな意味で自分なりに醸成された結果、本作の良さに気づけたのかもしれない。
なにはともあれ、本作品を再視聴したことによって、相当な収穫を得られたことは間違いないし、最高の感覚を与えてくれたのだから、最高の評価でお返ししたいと思えた。
このアニメはそういう作品である。
{/netabare}