レトスぺマン さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
このアニメ、年頃の子供の正直な本心に寄り添ってるよね
長文のため本文はネタバレで隠します。
{netabare}
私が本作について思うのは2000年初期の作品としては「なぜここまで人気があるのか」ということである。
確かに恐怖の演出やキャラクター、声優さんの演技など素晴らしいと思える部分はいくつもある。
だが、今でも熱狂的なコアファンが大勢いることや、某掲示板で祭り騒ぎにも似たような出来事があった件など、「本作品が素晴らしい」という理由だけでそれらと結びつけるには、もう少し論拠が欲しいと感じたわけだ。
つまり、本作には恐怖やキャラクターの描写以外にも隠された意味や人の心に絶大なインパクトを与えるなにかがあるのではないかも思ったこともあり、このレビューではもう少し作品を深堀りしようと思う。
まず私は当時、本作における視聴対象者層の一人であったが、その時常々感じていたのは、
【子供なんだけど無性に大人の気分に背伸びをしたくなる】
【少しだけ危険な事に手を突っ込んでみたい】の2つであった。
これについて調べてみると個人差はあれど、子供の成長過程において誰もがこういった気持ちにぶつかるという摂理に至ったわけだ。
そして、その2点に具体性を見出すとすれば、
①恐怖への興味・関心
②冒険心
③ギリギリのエロティシズム
④影から見守る大人の存在
となり、それと本作「学校の怪談」を重ねると以下の共通点がありありと見えてきたのである。
まず①について。
幼いころはまだまだ知らない事が多いのもあり、大概の物事に関しては恐怖を覚えるものだ。
しかし、年齢が上がり想像力や感受性が広がるにつれて、恐怖に対してのベクトルが変わったり、お化けや怖いものに対する耐性がついてくる。
そして怖いものに対して自分から進んで突進していくようになるのが、だいたい小学生~中学生の始めぐらいだと言われている。
ここでそれぐらいの年齢の子に対し、当人が想像する少し上ぐらいのレベル感で恐怖を与えた場合、かなりのインパクトと痛みを伴うことになるが、この【危険なことに手を出した結果、痛みを教えこまれる】ことこそが怪談の本質なのである。
本作の恐怖演出はだいぶ恐ろしいものであるが、上記の意味からすれば納得がいく描写である。
また本作は、主人公さつきちゃんと弟の敬一郎が舞台となる学校に転校してくるところから始まるが、子供の頃の【転校】というのは不安が必ずと言っていいほどついてくるものだ。
そこからすぐに怪談話に繋がるが、それは「話の最初の時点で恐怖演出が始まっている事」と同じであり、なかなか用意周到な準備がなされていることに個人的には舌を巻く結果となった。
次に②について。
この部分は男の子であるハジメとレオ君が主体となっていた気もするが、旧校舎へ向う見ずに入っていくところや、視聴覚室に置いてあるパソコンからインターネット経由で霊界に念を送りこむといった描写もある。
当時の自分としてはこれはかなり衝撃的な光景で、「パソコンでこんなことができるんだな〜」と真面目に思ってしまったぐらいで、正直興味や新しいことに対する行動力が高まるようなものがあったと思う。
続いて③について。
自分は男だから、これについては女の子のキャラに対しての思いになってしまうが、いわゆる小学校高学年辺り特有のやってはいけないとわかってても「女の子にちょっかいを出したい」気持ち+αをうまくアニメ中で再現してくれて結構笑かしてくれたということである(笑)
代表的なものだとパンチラ描写だが、それ以外にも扇情的だと思えるシーンやED曲だったりと全体的に程よい妖しさが出ていた。
基本ホラーとエロティシズムの組み合わせは相性がいいものとされているが、これを子供向けにうまくアレンジした結果の産物だとも言える。
最後に④。
これは①②③の項目を抑えるためにはどうしても必要で、これらは「行き過ぎてしまうと当人に悪い影響を及ぼしてしまう」特性がある。
だからこそ悪い方向に行かないようにするためのストッパー的な存在が必要であり、それがさつきちゃんの父親母親、味方キャラ、そして天の邪鬼が主体となってうまく機能したのだ思う。
また、恐怖というのは先述の通り「痛み」を伴う事と同じであり、そうなれば頼れることのできる立派な大人に助けを求めたくなるものだ。
それが居たときの安心感はひと際素晴らしいものとして映る。
ここでポイントなのは、あくまでも「見守る」ということであり、基本的には主人公達の行動に一任させて、どうしようもいかなくなった時に助け舟を入れることで、作品のドラマが引き立ち、視聴後に気分の良い達成感が味わえる算段が隠れているのだと思う。
さてここまで少し深読みしたが、人気の理由としては
【年頃に差し掛かった子供たちの正直な本心に寄り添った物語が展開されている】
からではないかと思える。
追記するならば放送当時、大人の人でもハマった理由としてはキャラ萌えや怖いお化けといったものがあれど、自身が通過した子供心+αの場面が沸々と思い出されるからこそ視聴意欲が高まったことも1つの要因ではないか?
ここまで本作のキャラクターであるレオ君ばりに長々と語ってしまったが、人によって感じ方は異なるため、あくまでもこのレビューは一視聴者の他愛のない話として受け取っていただければ幸いである。
{/netabare}