「フィギュア17 つばさ&ヒカル(TVアニメ動画)」

総合得点
67.3
感想・評価
55
棚に入れた
274
ランキング
2535
★★★★☆ 3.8 (55)
物語
3.9
作画
3.8
声優
3.9
音楽
3.7
キャラ
3.8

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ネタバレ

レトスぺマン さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

これは認知行動療法のお話かもね

長文のため本文はネタバレで隠します。

{netabare}
このアニメ、本当に素晴らしいものをたくさん持っている作品である。

それは作中で出てくる敵の不気味さ、日常描写の丁寧さ、可愛らしいキャラデザ、SF×日常モノのギャップ、人間ドラマがまず挙げられるが、もしかしたらこの部分も評価できるのではないか?と思ったものがあるのでそれを紹介したい。

数年前、私の友人が過度のストレスから精神の病を患ってしまった事があり、その際に見せたアニメがこの「フィギュア17」だったわけだ。
選んだ理由は、私の好きな他アニメ作品比べて癖が少ないというだけのことであったが、その結果「現実を見せられた気もしたが、自然に立ち直ろうと思えて、なおかつ現実でもその感情を長く持ち続けることができそうだ」という意見をもらい、なおかつ友人にとってのベストアニメになったのである。

これを聞いて私としては嬉しさも勿論あったが、同時に驚きでもあったわけだ。

そこで気になった私はネットで本作品の評論ではなく、「感想」を調べてみると、「精神的な病を抱えていたが、この作品を見て心が救われた」「心が穏やかになった」「悲しい結末ではあったが、なぜか精神が回復した」といった類いの意見も散見されることに気がついた。

ここから私は
・癒し系アニメでもないのに精神にまつわる意見が出るのは何故か?
・ストーリーの構成と上記の事柄にはなにかしらの相関があるのではないか?
と思い、もう一度見直すことにした。

すると、当時おそらく見過ごしていたであろう発見が出てくる。

それは【成長物語でメジャーとされているフローの一部を徹底して避けている】事である。

良く知られている子供の成長物語として、【弱気な主人公登場→仲間の助けを借りて少しずつ成長→スランプor嫌な出来事があり落ち込みいじける→X→大きく成長して大円団】の流れが挙げられるだろう。
※視聴者の視聴スタイルが主人公への感情移入である事を前提条件とします※

問題は多くの場合において、【X】の部分に何が入るのかという事だ。
私はここには【仲間からの叱咤激励】が入ると思う。
ただし、【叱咤激励】というのは、いじけた主人公に対して暴力暴言的行為を伴うものが多い。
例えば、「お前に期待してんだよ!」「お前のためを思って言ってんだ!」「気合いだ!」といった台詞やビンタの演出である。
確かにこれによって人間ドラマをより際立たせることは可能だ。

では、本作品はどうか。
主人公つばさが落ち込みいじけるシーンは何回も出てきますが、その時に周りのキャラクターが叱咤行動を起こす回数をカウントしてみて欲しい。【0回】のはずだ。
逆に、主人公を肯定する事、周りのサポート、主人公の話をしっかり聞く、抱擁といった動作があって主人公もそれに対して一時甘んじたり、依存状態になっても、最終的には自分で考えて答えを出し、その結果の前向きな行動が戦闘シーンに繋がっている。
つまり、カウンセリングと似たような手法が自然と作中に取りいれられているわけだ。

さらに、作中で描かれる小学校生活のリアルさは視聴者をその頃に引き戻すが、それに加えてキャラクターが持つ思いやり、愛情、博愛、身近な人がいなくなれば悲しい、といった倫理観や道徳性触れることで、それを改めて認識する。
そして、視聴者自身が忘れてしまったそれらを疑似的に取り戻す流れができている、という事も付け加えておこう。

つまり、本作品の日常とSF戦闘のシーンには
★日常シーン→【主人公(視聴者)にとっての根性論を撤廃した修行のようなもの】
●戦闘シーン→【日常シーンでの経験から結果なり回答を出すためのテストのようなもの】
という役割があると考えることができる。
そしてこれを★→●→★→●→・・・と繰り返すことで、視聴者が主人公と共に無理なく少しずつ成長していく、というメンタリズムを主体とした学習メソッドが隠されているのだと思った。

通常の成長物語だと戦闘や勝負をかけるシーンが修行となり、それ以外の日常シーンで達成を味わうものが多いが、これの逆をすることでより精神に訴えかけてくる物語が構成されるわけだ。

総して本作品に対し、評価したい点としては上記から考えるに【人が抱える精神的な負担を、正しい方向に軽減・改善させる効果がある】のではないかと感じた次第だ。

だが、今のところ本当にこういった効果があるのかを実証するためにはソースも少ないのが現状である。
もしかすると、医療分野で扱われているメンタル学習教材との類似性が証明できれば確信に変わるかもしれない。
{/netabare}

投稿 : 2023/07/17
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