「機動戦士ガンダム 水星の魔女(TVアニメ動画)」

総合得点
75.2
感想・評価
410
棚に入れた
1333
ランキング
833
★★★★☆ 3.7 (410)
物語
3.5
作画
3.9
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ネタバレ

キャポックちゃん さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.2
物語 : 1.5 作画 : 3.0 声優 : 2.0 音楽 : 2.5 キャラ : 2.0 状態:観終わった

脚本がとっちらかってる

【総合評価☆☆】
 近年、映画やWEBなどさまざまなメディアを通じて発表される機会の多い「ガンダムシリーズ」だが、本作は、プロローグがWEBアニメ、本編が分割2クールのTVアニメとして制作された。以下のレビューでは、すべてを併せて1本の作品として扱う。
 一言で評するならば、脚本に一貫性がない。いくつものモチーフを束ねて物語を構成しているが、単に並べただけで作品全体の方向性が見えてこない。TVシリーズとして前作に当たる『鉄血のオルフェンズ(第1期)』では、「自由を求める少年たちが、有能なリーダーに率いられて火星から地球に向かう」という明確なプロットがあり、さまざまなエピソードは、すべてこのプロットと関係づけられる。『水星の魔女』には、こうした骨格となるプロットが提示されておらず、話があちこち迷走する。
 本作の大筋を考えたのは、シリーズ構成としてクレジットされている大河内一楼だと思われる。大河内は引き出しの多いライターで、過去作で使われた多様なモチーフを引っ張ってきては、一つの作品に詰め込むのが得意だ。「ゾンビと侍とエクソダス」とか「吸血鬼と学園と巨大ロボット」のように、異質な題材をかなり強引に合体させて話を作る。
 シナリオ作りで大河内が中心になったと考えられる理由は、彼の関与した作品のモチーフが多く利用されていること。序盤で繰り広げられる「花嫁を決めるための学園内決闘」は、もろに『少女革命ウテナ』のパクリで、大河内はこのアニメのノベライズを担当していた。第1期後半から宇宙規模の企業活動が重要な役割を果たすが、これは、大河内が「宇宙の会社員もの」という谷口悟朗のアイデアに触発されて脚本を書いた『プラネテス』の基本テーマ。終盤で重要になる{netabare}ロボット内部に人の意識が取り込まれているという設定は、(オリジナルはおそらく『新世紀エヴァンゲリオン』だが)大河内の脚本による『革命機ヴァルヴレイヴ』で使われていた。{/netabare}
 もちろん、創作活動におけるモチーフの流用は大芸術家でもごく普通に行うことで、それ自体は何ら問題ない。問題なのは、流用したモチーフがバラバラに並べられるだけで、ストーリーを推進するエンジンとして機能していない点(流用するなら原作を超えろ!)。
 例えば、学園での決闘という一種のお遊びに、なぜ高価な大型ロボットが使われるのか。ここに「運営企業に陰の目的がある」とか「密かに人体実験が行われていた」という要素を付け加えれば、その後の展開とリンクさせられるはずだが、そうした工夫は見られない。軍事行動が始まるきっかけも唐突。同性同士の婚姻や親子の確執なども、他のストーリーラインとうまく結びつかないまま軽く流されてしまう。
 どうやらプロデューサーたちは、急増中のにわかアニメファンを取り込もうと、「国家間の大戦争を舞台にしない」「複数の女性を主人公とする」といった、予備知識がなくても楽しめる設定の採用に気をとられ、肝心のプロット作りは脚本家に任せきりにしたようだ。大のガンダムファンだった監督の長井龍雪が、いかにもガンダムらしい骨太のプロットを考案した『鉄血のオルフェンズ』とは大違いである。

投稿 : 2023/07/17
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サンキュー:

7

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