二足歩行したくない さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
2クールだけだと短すぎたのかメインがぶれていたような
2023年放映のガンダムTVシリーズ・水星の魔女、分割2クールの2クール目。
本作は、兵器開発のベネリットグループ内で最も売上貢献度の高い御三家"ジェターク社"、"グラスレー社"、"ペイル社"、それぞれの会社の息子たちが実質支配する、ベネリットグループが運営元であるアスティカシア学園を舞台とした学園モノな雰囲気でスタートしました。
前期1クール目は学園が中心となり、学園に編入してきた水星育ちの少女「スレッタマー・キュリー」が、ひょんなことで出会ったベネリットグループ総裁の娘「ミオリネ・レンブラン」と共に、迫害を受けていた地球寮メンバー協力の下、株式会社ガンダムを立ち上げる。
状況打破のため活動を続ける最中テロに巻き込まれるまでが描かれました。
宇宙で生まれ育った"スペーシアン"と地球育ちの"アーシアン"の対立、武器商人が運営する学園、急な失踪を遂げる学友、そして、医療技術であるガンドフォーマットを転用したモビルスーツ『GAND-ARMS』通称・ガンダム、と、不穏な空気は漂いつつも、前期ではそれでも基本的に明るい雰囲気でした。
ただ、ガンダム作品にしては人死にも混乱も少なく、組織感の感情も比較的シンプルで、物足りない部分があり、後半に期待して視聴をしていた勢も多かったと思うのです。
過去の多くのガンダムドラマを目の当たりにしてきたわけですが、『水星の魔女』は、そういう意味で裏切られたと言わざるを得ないですね。
後半になり、武器商人たちの思惑が根源にある代理戦争や、曲解される企業理念に、スレッタやミオリネは巻き込まれていきます。
ガンダムをパーメットで操るため、パーメットリンクによる情報負荷に耐えられる強化人士の開発が明らかになり、ストーリーは佳境を迎えるのですが、結局、すべて中途半端に終わった感じがします。
スレッタはそれら巨悪に対しガンダムで怒りをぶつけることはなく、早い話が"殺すために"モビルスーツに乗ってないんですよね。
悪人側も、宇宙人類の発展や重力からの脱却なんていう思考ではなく、地位と金のために動いていて、わかりやすくはあるのですがなんだかなーという感じでした。
そして、スレッタが対立している相手はそっちではなく、極めて個人的な家族平和のためであり、我が子のため、母のため、家族のためと、愛し合いながらもすれ違って戦闘をしてしまうのはガンダムらしさを感じましたが、それはそれとして巨大組織の巨大破壊兵器に乗り込んで悪人をビームライフルで消しクズにするガンダムが見たかったというのが正直なところです。
ただし、もし初めてみるガンダムが本作だった場合、感想は違ったと思います。
学園モノから始まり、GANDを医療技術として発展させようと考える株式会社ガンダムの設立を行う、そこから宇宙規模の戦闘に巻き込まれてゆくドラマは引き込まれるものがありましたし、パーメットリンクという技術を根幹としたSFも良かった。
本編終了後もGAND-ARMSは存在するのでそれを揺り起こして発生する事件や、前日譚となるヴァナディース事変など、スピンオフで描き起こせる部分もありそうです。
また、ラストがガンダム作品と思えない大団円です。
戦い続けた挙げ句精神崩壊したり、地球に落下する巨大衛星の軌道をニュータイプの力で変えようとしたり、敵組織を壊滅し、宇宙に投げ出された恋人と宇宙で抱き合って終わりなど、先輩ガンダム作品と比較するとぜんぜん違う穏やかな終わり方です。
個人的は嫌いではなく、終わりよければ全て良しな気もするのですが、そろそろ血を血で洗いモビルスーツ内で人体爆破するガンダムが見たいですね。