てとてと さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
60年代エリート高校の活気が見所の雰囲気アニメ?内容は悪くないが平坦で盛り上がりに欠ける
宮崎吾朗監督による91分の映画。
1963年の横浜を舞台に、朝鮮戦争で船乗りだった父を亡くした女子高生と、取り壊し予定の部室?の存続運動やってる男子高校生が恋したり、実は兄妹!?と揺れ動いたり。
【良い点】
昭和38年当時高校生だった世代の、良い意味で戦前の気風が色濃く残りつつも、自由闊達な活力ある青春風景。
モブ含めて教養や志が高く、哲学や天文や文学に打ち込んだり、上官(理事長)に軍国的な受け答えが清々しかったり、こういう雰囲気も良いなぁと。
主人公(女子高生)はかなりの名門かエリート校と思われ、生徒の自主性や戦後民主主義教育を重んじつつ、活発に言論したり目標に邁進する様はある種の良き青春な憧れを感じる。
これを昭和38年の横浜の情緒や古い校舎などのジブリ美麗作画で活写、これだけで雰囲気アニメとして91分見られる内容はある。
キャラデザは普通だが背景描写含めれば流石のジブリ。
楽曲も「上を向いて歩こう」他、雰囲気に合った良曲あり。
声優は長澤まさみ氏が流石の好演。
ラブコメというかロマンス面も、主人公の海と俊が青春劇の過程で惹かれ合う→実は兄妹!?という波乱でまずまず。
ふたりとも教養と気品があり、昔のエリート学生ならでは?の奥ゆかしい交際は良かった。
【悪い点】
地味で盛り上がりに欠ける。淡々と進行。この映画で特に印象的だった場面が見当たらず。
ストーリーの軸は主に旧建物取り壊し反対運動と、主人公らの恋の行方だけど、いずれも中途半端。
前者に関しては、海には特に思い入れがある経緯や描写が乏しい。
運動の経緯も、とちらかというと民主主義学生運動ごっこ(ごっこ、というのは意地が悪いけれど)を見せたかったように見える。
話のわかる理事長への直談判成功で殆ど波乱なし、盛り上がりに欠ける。
またこの運動を糧に主人公らの関係深まったかも微妙。
後者に関しては悪くは無いが、前述の通り学生運動と恋進展が結びつきにくいのと、後半の兄妹問題からの疎遠や大団円の過程が雑。
実は兄妹!?な禁断は凄く盛り上がるシチュエーションなのに盛り上がらず。
何となくキャラが脚本に動かされている感。
原作は未読たけど、原作にあったであろう掘り下げや機微が尺不足で抜け落ちている印象。
その割に無駄尺(冒頭の冗長な出だしとか、雑な学生運動)多いのも気になる。学生運動に関しては雰囲気は好きだけど。
キャラは古き良き昭和の優等生の域を出ず地味。
作画は綺麗だがキャラデザは普通。2011年という制作年代を考慮すると見所としては微妙。
楽曲は良いが、作劇を盛り上げ方が地味。
声優陣は悪いわけではないが、本職に対して特に優位な感じがしない。
【総合評価】4点
アニメーションと(多分)原作のクオリティーが高い故に最低限の見所は確保しているが、90分映画としては微妙。
たぶん、監督が描きたかったモノは「古き良き戦前の気風も残しつつも戦後の自由や民主主義に輝く青春」という印象。
これはそこそこ良かったけれど、実体験が伴わないためか?表層をなぞるに留まった感じ。
評価は良いでもいいんだけど、ジブリとしては微妙という事で「普通」
時代背景は違うけれど、エリート高校生の知的な青春劇という点では翌年京アニの「氷菓」がずば抜けて面白い。
または京都大学舞台(と思われる)「四畳半神話大系」とか、年代が新しい(未来?)「映像研には手を出すな」辺り。
コクリコ坂の比較対象は上記と見ているので、コクリコ坂は地味な佳作という認識。