てとてと さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
大正ヴァンパイア軍人ロマン。キャラドラマに魅力あり
大正浪漫でヴァンパイアの軍人や関わる人々との切ないロマンス、ドラマ。舞台作品原作で全13話。
※作品データベース様より転載
【良い点】
大正浪漫の光と闇、華やかな舞台から闇に生きざるを得ない吸血鬼や関わる者たちの悲哀をロマンチックに描いている。
主人公たちは吸血鬼の特務部隊で暴れる吸血鬼取り締まるが、切ない人情系のドラマが多い。
吸血鬼と人間の生きる時間や住む世界の違いという題材はベタではあるが、
「弱き者、汝の名はヴァンパイア」な軸がしっかりしているのと
主役たちが戦前の軍人なためか、ロマンスに凛とした高潔さ感じるのが魅力。
夫と別れる妻たちも、現代女性より芯の強い愛情感じる。この美しさは大正時代舞台にした価値がある。
全体のストーリーも、陸軍の金剛鉄兵計画(ヴァンパイアの軍事利用)を軸に進行、徐々に陰謀に近づいていく流れで分かり易い。
ラストこそラスボスが茶番喜劇ぽかったが、そこも含めて一種の舞台演劇的な作風だったと好意的に見た。
一抹の切なさと希望を残す終幕も悪くない。
作画も良いが、それ以上に楽曲が良い。
和楽器バンドで大正ぽさと悲哀感じさせるOP「生命のアリア」は2021春でも印象に残る良主題歌だった。
声優陣は山寺宏一氏が渋い。沢城みゆき氏の芝居掛かった演技も惹きこまれた。
キャラクターに魅力あり。また同僚間の関係が良好で軍人ぽくなく、掛け合いが親しみやすい。
そのためか、悲哀に満ちたドラマの割には作風が辛気臭くない。この点で、同時期の擾乱より格段に見やすかった。
大正軍人らしい誇りと生き様もカッコよく、良い塩梅。
ストイックな軍人だが情に篤い前田少佐、能力劣るイジられキャラなオッサンだが一番人間味あった山上さん、大人ふたりが魅力的。
特に山上さんはコメディリリーフでありつつ、人間の妻との別れや、盟友を守っての最期など見せ場残した。
普段コメディー要員だからこそ、終盤の展開は響いた。前田と山上の大人の友情も尊い。
ヒロインはお転婆な女性記者の葵ちゃん可愛かった。芯の強いヒロイン、2021春でも希少。
群像劇としても良かった。
【悪い点】
群像劇で主役が複数いる上に、全般にストイックなのと、受動的なドラマなためか、盛り上がりは地味。擾乱よりはマシだけど。
キャラの魅力は感じるが、掘り下げはやや物足りない。石田彰声のマッドサイエンティストとか、300年生きてる寡黙男とか、勿体無い。
寡黙なスワと遊女の関係は良かっただけにもう少し深みが欲しかった。
前田と山上はいいんだけど、他はゲスト含めてドラマがやや詰め込み気味。
妻たちは強く美しい女性なんだけど、関係が完成されすぎていてややとっつき難い。
葵ちゃんの見せ場が少ない。若きエースな栗栖との幼馴染関係があまり活かせてなかった。
狂言回しなデフロットの役割がイマイチあやふや。
ラスボスが小物だったのも、終幕の盛り上がりに欠けた。余韻あって嫌いではないけれど。
【総合評価】6点
同時期の近い路線と見なしていた「擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD」よりは面白かった。
地味な面や物足りなさもあるが、良い作品。
評価は「良い」