青龍 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
動機に共感できないとしても、その理屈にある種の哲学を感じる作品。
本作は、完全な密室から脱出した殺人犯を追うミステリーもの。
犯人のトリックやタイトル回収については、作中のヒントを追っていければ納得のいく作りになっていると思う。
ただ、視聴者を選ぶとすれば犯人の動機だろう。なぜなら、この殺人犯が天才で、言っていることはいかにも頭の良い人が考えそうな理路整然としたものなのだが、その内容について、私を含む多くの凡人は共感できないと思われるからだ。
このアニメと近い感想だったのが、ちょっと昔の映画だが、パトリス・ルコント監督による1990年のフランス映画『髪結いの亭主』。殺人犯の心境よりは、恋愛の方がまだわかってもらえるかと思ったので紹介する。
【以下、上記映画のネタバレ】
この映画は、{netabare} 理髪店を営む若くて美人でグラマラスな妻のいる中年の冴えない夫の話なのだが、結末がとにかくすごい。
彼らが10年ほど幸せな夫婦生活を送った後、突然、妻が入水自殺をするのだ。その理由が、美人な妻が浮気をしていたとか夫に不満があったとかではなく、いずれ自分が老いて今の幸せな時間を継続できなくなるときがくるから、そうなる前に今の幸せの絶頂期を永遠にするため自ら命を絶つというもの。
いやいや、そうだとしても死ぬことないとか、残された夫はかわいそうじゃないの?とか、極端すぎるでしょうというのが我々凡人の発想(笑)。
ただ、その美学は、徹底かつ完全な美しさを追求したある種の人生哲学として見れば、自分は真似しないけれど、理屈がわからないこともないというところが本作との共通点かと。{/netabare}
【以下、ネタバレを含む本作の感想】
{netabare} 印象に残った四季の言葉として、「私は自分の意思で生まれてきたわけではないから、死ぬときも、自殺ではなく、自分の意思では死にたくない」というもの。確かに、首尾一貫した美学・人生哲学ともいえるけど、共感はしないよねという。
また、他人の干渉を煩わしいと感じるか、「他人の役に立つ」として自分の存在理由と捉えるか。頭のいい人ほど、真賀田研究所のように、外部との接触を避けて、自己完結する傾向が強いらしい。
ただ、四季は、多重人格者なので、確かに自己完結しているのだけれど、四季という人格を確立するために他の人格を必要としている。無理に自己を統合しないことで四季という人格を守り、そのために分裂するって、確かに、首尾一貫してるとはいえるけど、共感はしないよねという(笑)。
あとは、四季は、どっからどこまで計算してたんですかね。最後、犀川から警察に捕まるふりをして逃亡したところなんかを見ると、そこまで計算していたようにも思えてしまう。
四季には、PSYCHO-PASS1期の槙島聖護みたいな魅力があった。あまり深淵を覗いて引き込まれたくはありませんが(笑) {/netabare}
最後に、声優について、本作は、犀川準教授(加瀬康之さん)とその学生である西之園萌絵(種﨑敦美さん)の二人の会話を主軸として終始進んでいく。
その内容がお互いのちょっとした言動等から相手を客観的に分析して(おそらく萌絵としては恋愛的に)優位に立とうとするところがあり、とても理系っぽいのだが、萌絵のちょっと背伸びしてる感じを種崎さんが好演している。
あとは、鈴木達央さんが、普段あまりやらないような冴えない研究副所長役をやっていたのが新鮮だった。