レトスぺマン さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
私はこのアニメによって変なものを植え付けられたのでした(笑)
長文のため本文はネタバレで隠します。
{netabare}
まず、結論から言ってしまうと私の本作品への評価は「最高」だ。
それは、作品から放たれる独特の雰囲気やエロ描写から、当時リアルタイムで視聴していた時でも、「なんて新しい作品なんだこれは!」と思えたことが最も大きかった。
そしてその中にあるテーマ性や、ストーリーの構成に一気に惹かれていくものがあり、リアルタイムでの最初の視聴時に味わえた感覚が蘇るような気分にもさせられ、視聴後の達成・満足感を再び味わえたことは、この上ないものだったとも感じる。
まず、本作品の雰囲気の正体とはRPGのような世界観+ラノベ的着想+自己肯定の話と言えるはずだ。
本作品のあらすじは、影で暗躍するモンスターに支配されている世界観の下、とある出来事からメロスの戦士に目覚めた主人公ボッカが、モンスター倒しの旅に出る話だ。
しかし、行く先々でモンスターに翻弄されている人々と関わる中で、この世界のどうしようもない現実を知ることになり、ストーリーの内容も結構ネガティブなもので、辟易とする場面も多い印象がある。
ただ、そんな中でも楽しめて視聴することが出来たのは、全体の雰囲気の良さであったことは大きく、内容を読み解く難易度の高さも相まって、攻略困難なダンジョンを進むような面白さがあった。
例えば、物語前半の白夜岬編〜猿人湾編はさも現実にありそうな場所が舞台になっているのにも関わらず、その中で巻き起こる恐怖や、全体的な謎に包まれた感じがなお一層雰囲気を助長するものであり、迷宮島編ではとにかく登場人物たちの「歩くシーン」や「間」を多めにしている特徴があるように思えた。
これは、視聴者自身に考察の余地が与えられることにもつながっており、それに加えて、操作(=(このアニメであれば)考察)の自由、探索、仲間との戦闘といったものはRPGのゲームに出てきそうなものでもある。
そこからまるで自分が主人公になった気分で視聴が行うことができたような気がして、物語に没頭できた要因の一つであったと感じる。
もう一つは「ラノベ的」着想だ。
例えば、ラノベのお約束ってどんなものだろうと考えたときに、ファンタジーであれば、「敵に囚われたお姫様を勇者が助けに行くストーリー」になるし、それ以外のジャンルでも記号的なキャラクターや中二病の万能感。
そして、結局のところ主人公とヒロインの恋愛にまとまってしまうところが挙げられると思う。
本作品はそのような要素がふんだんにに取り入れられており、こういったものは「わかりやすい」事柄の典型例とも言えるが、これが難解なストーリーに程よく作用していて、キャラクターのキラキラしたエロ可愛さにかなり釣られた部分はあったにしても(笑)、ストーリーを理解するためのヒントにもなっているところは、好印象になるものであった。
最後の「自己肯定」の話だが、これは「エヴァンゲリオン的」な作風によるものだと思う。
つまり、「作者の描くテーマを視聴者自身が読み取っていく」ことに加えて、「若者が抱える不安感」を表す描写の凄まじい部分がそれなのだと思う。
本作品は先述の通り、世界観がどうしようもない状態であり、モンスターに媚びる大人の存在の中でも比較的大きな権力を持つ「モンスターエージェント」の描写も見どころの一つで、彼らの考えがこのアニメの世界観の【常識】としてまかり通っているところがあるわけだ。
そんな中でメロスの戦士として対抗する主人公たちとぶつかることで、そこからどのような結果が得られるかといえば、それは白黒はっきりつけられるようなものでもなく、いわゆるその中間のグレーゾーンに焦点を合わせるような物語が展開されたことは、奥深さがあるようにも思えて、視聴欲を高めてくれるものがあった。
ところが、それも割かし真剣に答えを考えるというよりは、そこに向き合う登場人物に対して小馬鹿にする、あるいはくだらないものだとバッサリ切り捨てるようなセリフも数多く存在する。
それらは確かに滑稽で笑える場面ではあるものの、ハッと気づかされることも多く、話数を重ねていく毎に、自分の本作品に対する考えの見直しと発見が同時にできて、人によって合う合わないはあるものの、作り手側のセンスの良さを実感できたことはポイントとして高い。
最終的にはモンスター側のボスのような存在を倒したものの、物語の最初と最後で状況が全く変わっていないことは悲劇として捉えられるものではあるが、これは個々の人生に対する向き合い方と同じで、
・周りを変えることのできない現状に対して、自分の信念のようなものをいかに曲げずに進むことができるか?
・自身の行動で影響を及ぼすことのできる輪をどう広げていくか(=自分の想いを世に敷衍させていくことがいかに難しいか)
・困難な状況に陥ったときに、助けてくれる友人や恋人への接し方について
・周りの悪い常識や慣習に捕らわれず、大人になって年老いたとしても、矍鑠とした精神を維持していく
・自身が思い描く理想の人間像(=忘却の旋律)に近づくために日々精進する
のようなメッセージを受け取ることができ、本作品の凄みを感じる結果となったわけだ。
本作品は先述の通り、難解なストーリーでわかりにくく、ある程度の視聴者側での能動的な姿勢が求められるものではある。
ただし、その中でもしっかりとテーマ性さえ受け取ることができれば、割かし共感を得やすい作品でもあるような気がする。
ケレン味のある演出はやはり原作がGAINAXというだけあって、強烈であったが、個人的には楽しめた部分も多く、場面ごとに隠れている描かれている文字や絵を見るためにコマ送りの機能を使ってしまった程で、これはストーリーを楽しむための補助になった。
また、本作品のエロ描写については好き嫌いがかなり分かれるところではあるが、登場する女性キャラクターが総じて「ねえねえ、私と一緒にイイコトしようよ」的な姿で迫ってくることが一因のような気もする。
ただ、自分はこの描写にうまい事流される結果になり、今思えばこの作品でなにか変なものを植え付けられた気がしなくもないが(笑)、これについてもコマ送りを使用すると【幸せになれる瞬間に遭遇できる】ということだけは付け加えておきますかな(笑)
とはいえ、本作品のストーリーからはトップをねらえ!やエヴァンゲリオンから続く「周囲の人々の成長から取り残される悲哀」のようなものが感じられ、それに対して、一つの回答が提示された点。
そして、ゲーム感やエロといった好きな人には楽しめる描写を加えることで、単なる謎解きだけでは終わらない構成は多分に評価すべきものだと思えた。
視聴者が能動的になれる作品は、まるでパズルのピースをはめ込んでいくような感じすらあるが、本作品については、与えられた絵を自分で自由に切り刻んでピースを作るような面白さがあり、解釈の多様さという点においては、同種の他作品を上回っていたと感じる。
{/netabare}