nyamu さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
傑作だった
ユーフォニアムの方は未視聴。
まったく前知識がないまま見始めて、スタッフが表示されて初めて名前だけは聞いたことがある「響け!ユーフォニアム」という作品関連だと気づく。
階段で誰かを待つ女の子。他の人が来ても特に興味を示さないけれど、その子が来れば軽やかな音楽が流れだす。
人物関連がわからなければ止めて、本編を見てからで良いかと思っていたけどそんな心配は杞憂だった。
前を歩く女の子とその後を追うように歩く女の子。大してセリフがなくてもそれだけで二人の関係性は分かる。歩き方や靴箱から靴を出して履くしぐさまで丁寧に描写されていて、それぞれがどういう人物なのかまでわかるように表現されている。
画面に映るのは後ろの子が見ている景色。前の子の後ろ姿。足元と、影と、揺れる髪の毛。その子のことが大好きで大好きで大切なんだろうと分かる。
最初こそセリフが少なくてもどかしさを感じるものの、タイトルが表示される頃には引き込まれていた。
ひとりぼっちで暮らしていたリズの元にやってきた青い鳥。二人はお互いに必要としていたけれどいつしかリズは自分が青い鳥を閉じ込めていることに気づき青い鳥を解き放つという童話に重ねて、みぞれと希美の二人の物語が描かれる。
後ろ姿だったり、足の動きだったり手の動きだったり。表情が見えなくてもセリフがなくても、繊細に丁寧に描かれている全てのカットで言葉にはならない何かを感じずにはいられない。俯瞰ではなくみぞれや希美の視界が多くのカットで使われているので必然彼女たちの心情にシンクロしやすくなる。セリフではなく映像で表現されているから画面から目を離せない。セリフが本心かどうか、本心だったとしてもほかの感情はないかは自分で読み取るしかない。
さすが原作、監督、脚本が女性で占められているだけあって、中学生~高校生の女の子同士の関係性がよく表現されていると思う。中学生ほどあからさまではないけれど、まだ残っている大人になり切る前の純粋さ、ひたむきさ、危うさ、狭さ、脆さ。そして自覚していて隠したい、自分の狡さ、独占欲、羨望、嫉妬。
言えない言葉、言わない言葉、あえて言った言葉。
二人の関係が主題だけれども、周りにはそれぞれに慕ってくれる下級生だったり近くで見守る同級生や大人がいるのが世界が閉じていなくて素敵だ。
写実的ながら淡い色彩の背景と細い線で描かれたキャラはいわゆるアニメっぽくはあまりない。それでいて、これはアニメでしか表現できない繊細なものだろうと思う。
登校のシーンで始まり、下校のシーンで終わる。物語が終わって二人の関係性に変化があったことがわかる。
喪失と挫折と葛藤と成長の物語。
結局、どちらがリズでどちらが青い鳥だったのか。セリフでは彼女たちの解釈があったが実際のところはどうだろう。自分は二人共がリズであり青い鳥であったように思う。解釈は人それぞれだしそういうのも心地良い。
全くつまらないと思う人もかなりいそうな気がするし、相当に人を選ぶ作品だと思う。
けれどもこれは傑作のひとつと言っていい作品だと思う。
本編のアニメも見たいし原作も読んでみたいと思った。