「鬼滅の刃 刀鍛冶の里編(TVアニメ動画)」

総合得点
78.3
感想・評価
389
棚に入れた
1337
ランキング
564
★★★★☆ 3.9 (389)
物語
3.7
作画
4.3
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
3.9

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青龍 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

今回の鬼は同情の余地のない「悪いやつ」。

今さら説明不要の大人気アニメ『鬼滅の刃』の続編。

とにかく画がきれい!過去作も美麗だったが、今回は特に鬼舞辻無惨の本拠地で、上下の概念や内部構造を自在にコントロールできるという無限城の表現が圧巻の一言。
3DCG技術を取り込みながら、フルCGのゲームや実写映画とは違う、アニメ独自のリアルな表現の一つの見本といえる出来栄え。
また、刀剣を用いた戦闘シーンは、アニメならではの大胆さがありながら、それが荒唐無稽にならないだけの緊張感と説得力がある。画の迫力だけで魅せることができる作品だ。


もっとも、画と比べて物語については、これまでの過去作と比べて、敵役の鬼の背景描写が薄いと感じる人が多いと思われる。原因は、タイトルに書いた通り、今回の鬼が同情の余地のない「悪いやつ」だったからだろう。

どういうことかというと、本作は、上弦の鬼が、下弦の鬼と比べて、より「人」とかけ離れた、そもそも人とは相容れない発想(狂気)を持った存在だと表現したかった結果、背景描写が薄くなってしまったと考えている。

今までの鬼は、鬼になった経緯にまだ同情の余地があった(例えば、「下弦の伍」の累は病気で寂しい思いをしてきたので家族が欲しかった。また、遊郭編「上弦の陸」の堕姫も、生まれ育った境遇に同情の余地があった。「人」らしさが完全には失われておらず、まだ完全に「鬼」になりきれていないともいえそうだ。)。

しかし、今作の「上弦の伍」の玉壺と「上弦の肆」の半天狗は、今までの鬼と違って人であったときから、およそ共感できない異常性または自己中心性を持っていて、より人とはかけ離れた、そもそも人とは相容れない発想(狂気)を持った鬼に近い存在だった。そして、それが鬼になっても変わらずに強化されただけだ。
(ラスボスである鬼舞辻無惨も異常で自己中だが、無惨と上弦の肆と伍との違いは、彼らなりの理屈に対して、人として理解しがたいとしても、ある種の美学を感じられるかどうかではないだろうか。無惨には「完全になる」という普遍的な美学があるが(例えば、完全な円を美しいと感じるみたいな)、玉壺の芸術は誰かに共感されるためというより自己満足なので普遍性がない。半天狗はただの異常な自己中。そのスケール観の違いが、上弦の肆と伍の悪役としての小者感につながっていると思う。)

それゆえ、本作では、過去作のように倒される鬼の側に同情を誘うような事情もないから、正に「鬼退治」という勧善懲悪ものの単純な構図だけが強調されることになる。その結果、今までのように鬼を討伐して、それだけではスッキリしないような悲哀が残るドラマ性がなかった。また、上弦の肆と伍は、人を殺すことに全く迷いがないから、人間性を喪失した「完全な鬼」として強いと説明することもできる。

つまるところ、本作では、玉壺と半天狗が人外の異常性をもつことさえ視聴者に伝わればよかったといえる。まして、彼らについて掘り下げたところで、視聴者に生理的拒否反応を示されて万人受けしないうえに、視聴制限のレーティングを徒に引き上げる結果になるだけだろう。だから、今回の敵役の背景描写を薄くせざるをえなかった。

したがって、特に本作については、感動物語ではなく、勧善懲悪ものの桃太郎よろしく鬼退治のアクションものとして観れば、十分見応えのある作品に仕上がっていると思う。
(なお、最後の禰豆子のシーンは、確かにそれまでの経緯を知っていると感動的なシーンなのだけれど、原作未読で理由がまだわからないので、頭でっかちの私の中で感動より先に「え、なんで?」が来て絶賛消化不良中である(笑)。なんかすっきりしねぇ。)


最後に、声優については、特に玉壺役の鳥海浩輔さんが素晴らしいと感じた。主人公側の声優だけが豪華でも、敵役の演技が見劣りするものであれば、主人公側が映えないし、全体としての作品の評価はどうしても下がってしまう。
鳥海さんは、今回の役柄が上で書いたように純粋な悪役であったから、声を聴いた瞬間に敵役と分かる素晴らしい怪演だった。
無限列車編、「下弦の壱」の魘夢役の平川大輔さんのときも感じたが、敵役は大体すぐに倒されてしまうので出番は短くなりがちだが、作品全体の評価を左右する重要な役どころだ。

投稿 : 2023/07/08
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サンキュー:

8

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