「見える子ちゃん(TVアニメ動画)」

総合得点
73.7
感想・評価
384
棚に入れた
1237
ランキング
988
★★★★☆ 3.6 (384)
物語
3.5
作画
3.6
声優
3.7
音楽
3.4
キャラ
3.6

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ネタバレ

キャポックちゃん さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 2.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 2.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

みこはなぜさとるに深々とお辞儀をしたか?

【総合評価☆☆☆】【重大なネタバレあり】
 アニメ「見える子ちゃん」は、物語の構成がねじくれており、序盤のちょっとエッチで他愛のないストーリーが、第5話辺りから急に方向性を変える。おそらく、原作漫画の展開をそのままなぞったのだろう。原作は、突飛な設定で読者の気を引くホラーコメディとして始まったものの、話が続かなくなったらしく途中で方針転換した。いかにもまとまりが悪く、優れたアニメになるとは思えない代物である。ところが、原作の構成をあまりいじっていないにもかかわらず、アニメの終盤(第10-11話)はドラマチックに盛り上がり、なぜか作画の質も大幅に向上する。その象徴的な場面が、第11話半ばで描かれる、ヒロイン・四谷みこが獣医師のさとると対話するシーン。
{netabare} みこは、臨時教員の遠野善が猫の死霊に取り憑かれているのを見て、猫を虐待した報いと思い込み下校時に跡を付ける。ところが、この疑いはまったくの誤解で、実は大の猫好きだった。自分の誤解から交通事故に遭わせてしまった善を見舞ったみこは、そこでさとると出会う。{/netabare}
 みこは、冒頭の何話かでエッチなお姉さんの役を振られていたものの、実際には、利発で礼儀正しく友達思いのお嬢様。男性との交際経験はないらしい(シスコンの弟くんが邪魔したのかも)。そんな彼女が、若いとはいえ大人の男二人に挟まれて、警戒しないはずがない。しかも、一人は恐怖を感じていた教師、もう一人は初対面の獣医師。ところが、彼女はさとるに対して丁寧に会釈する。
 実は、 {netabare}その直前に、善が「(捨て猫の里親について)僕にツテがあるから、そこで探したらいい…」と言ったのを廊下で聞きとがめたさとるが、「ツテって俺のこと? 俺んとこの動物病院を猫であふれさせる気か、善」と言い、善が「さとるか」と答えていた。会釈は、この会話を受けた行動である。
 女子校の生徒にとって、大人の男が名前で呼び合う光景など滅多に目にするものではない。名前呼びと会話の内容で一気に警戒心が解けたからこそ、みこは素直に会釈したのだろう。 {/netabare}そこから、病室を出て病院屋上でさとるとみこが話し合うシーンへとつながる。
{netabare} 小学校からの友人のさとるは、善が毒親による強圧的な支配のせいで感情を失ったように見えること、なんとか立ち直らせようと無償で手助けしていることを語る。「なんでそこまで?」と問うみこに対して、さとるは「友達が困ってたら助ける。それだけ」と笑顔で答える。涙が止まらなくなる名シーンである。{/netabare}
 仕事に戻ろうとするさとるを「あ、あの」と呼び止めたみこは、「ありがとうございました」と深くお辞儀をする。さとるは、みこのメリットになることは何もしていない。このお辞儀は、彼の行動そのものに対する人間としての感謝なのである。
 おそらく、こうした場面の描画を通じて、アニメーターがみこへの共感を深めていったのだろう。作画の質が向上したのは、共感に溢れているからである。優れたアニメが生まれるには、アニメーターの思いが重要なことを実感させる。

投稿 : 2023/07/05
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