ゲリオ さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
持ち上げすぎるのも良くない気が
当初の視聴予定には無かったがネットの評判を受けて見ることにしたアニメ。
幼児向けみたいな絵柄に敬遠してしまったが、視聴してみればナルホド、話題になるのも頷ける作品だなぁと。
辛い境遇に生まれた主人公が号泣するシーンは不覚にも涙腺崩壊しそうになった。
濃密な感動描写と絵柄のギャップが更に話題を帯びそうな雰囲気を感じ取った。
主人公のボッジは王家の長男として生まれながら、赤ん坊のように非力で耳も聞こえず言葉も話せない少年。母親は既に亡くなっており腹違いの弟ダイダがいる。
城内の誰もが世継ぎはダイダの方だと思っているが、健気にもボッチは王様になることを諦めていない。
現王ボッスは死に際にボッジを後継とする遺言を残すも、継母でダイダの母親であるヒリングに遺言を棄却され、ダイダが王になってしまうことで悔し涙を流すボッジ…というのが序盤3話までのあらすじ。
で。「このクソババア〜!」とヒリングにヘイトを集めるよう視聴者を誘導しながら、3話Bパートで実はヒリングは血の繋がりはなくともボッジを実の子と同じ様に愛情を注いでいたことが明かされる。ボッジを王にしなかったのは決して疎んじたのではなく、ハンデを抱える身では重責は担えないという苦渋の決断だったのだ。
これは予想してなかった展開で非常に感動したし、ここが個人的ハイライトだったね。
とまぁ、最初の数話は非常に楽しんでいたものだが、だんだん感動の押し売りがウザったくなってきたのも事実だ。
とりあえずボッジに大粒の涙を流せとけば視聴者も泣くだろうって魂胆が嫌らしい。
あと出てくる敵キャラが、ことごとく「実は悪人ではありません、みんな根は善人です」ってのもどうかと。
明白に自分の意思込みでボッジを殺しにきてたダイダが被害者になってるの違和感ありすぎだし、諸悪の根源たるミランジョに至っては実際にボッジママ殺害してるし、どんな可哀想な過去があろうと許されざる極悪人であることに変わりはない。
おまけに父親のボッス王も強さを誇示するためにとりあえず相手をボコる真性DQN。息子の身体を犠牲にすることで地上最強の座を得てしまったドクズ。
こいつらに忠誠を誓ってるアピスとかガイジにもほどがあるし、結局あいつは何がやりたかったんだコラ。登場人物の行動原理を不明瞭にしつつ、終わってみれば大した動機もない奴ばかりなので、その点は少なからずストレスが溜まった。
極めつけは最弱が特徴だった主人公ボッジが急激に強くなる過程。
呪いでどれだけ鍛えても強くならない人間が、どんな魔法を使えば強くなるのかと思ったら「教え方が上手な師匠とちょっと修行しただけ」ってそれはいくらなんでも…
しかも、人並みに戦えるようになるどころか地上最強クラスに覚醒するとはご都合主義にも程がある。
以上のことから設定の完成度が高いとは言い難い作品だったと思う。
感動の押し付けや繊細なアニメーションで上手く誤魔化せてるけど、内容を冷静に判断すれば小学生の考えた漫画レベルと言える。(無論、すごく才能ある小学生ね)
作品タイトルの「王様ランキング」は主題になるほどの関連性は見受けられなかった。
まだ原作が続いてるようなのでこれから重要なテーマになってゆくのかもしれない。
個人的には続きが気になるタイプの作品では無かったのでどうでもいいかな。
総評としては、見て損したとは思わないし、オタ臭が薄いアニメということで一般層にも勧められる系のアニメだったが、こういう雰囲気重視の作品が実力以上に持てはやされるのは、SNS時代における良くない事例だと思うところが以前からあり(100ワニとかタコピーとか)…まぁ、終わってみれば本作は言うほどバズらなかったので実力並の盛り上がりで一安心。
アニメーションはキャラの動きから背景まで非常に丁寧で、名作を作り上げるぞというクリエイターの気概はひしひしと伝わった…が、残念ながら「鬼滅にはなれなかった」というところで、レビュー終わりです。