nyaro さんの感想・評価
2.5
物語 : 1.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 1.5
状態:観終わった
「ポカーン」としか言いようが…意味不明のかぐや姫リメイク。
この作品の価値は?と問われて明確に解答できるかスタッフに聞いてみたいなあと思わせる作品でした。私の第一印象は「ポカーン」です。
確かに「絵柄」としては面白い実験だとは思います。ただ、アートにまで昇華されているか、と言えばそこまで強い感動があるほどではありません。時折みせる姫の表情や動きにはさすが、と思うところはありますけど。それなら正直15分のショートフィルムで十分です。
ストーリーはほぼ私が知っている話そのままですが、現代的な価値観が入っているところはあります。
まず、平安の時代に山野の方が良かった…という感覚が生まれるのか。本当の山奥の暮らしの貧しさ、汚さまで描けているのか。現代において妄想した観念的な価値観の押し付けではないだろうか?と感じてしまいます。
幼馴染への恋慕のような描かれ方はありましたが、それは何が言いたかったのか。郷愁とか幼き日の思い出?恋心?だとして、かぐや姫の話に入れる意味は?かぐや姫が罪人だったという設定は?
ストーリーの深さが増すなら、いくらでも改変していいと思いますが、単にラストの方にちょっとした「感動を作る」ための小賢しさにしか感じられませんでした。そもそも、この改変ならオリジナルの方がよほど感動できる気がします。
考察すれば何かがわかるのだとしても、見ただけだとここが考察ポイントかなあというフックが見つかりません。
あえていうなら、翁が毒親に見えなくはないですが、その演出がかえってかぐや姫と翁の間の愛情が薄いように見えてしまう逆効果が大きかった気がします。
そこが本来唯一のかぐや姫に対する同情ポイントでしょう。少なくとも5名の貴族に対するいなし方は原作でもかなり不誠実に感じ、かぐや姫って性格悪いよなと、以前から思っていました。そこを薄めるのが翁夫婦への愛情だと思うのですが、ラストで取って付けられても…
そして、何といっても映画ですから。何らかのエンタメは必要だと思います。この誰でも知っているストーリーを見せられてどうしろというんでしょうか?
監督は故人で遺作でしょうけど、それは作品の批評には関係ありません。はっきり言えば時間の無駄でした。可能性があるとすれば、暗い劇場の大スクリーンで集中して見ると、パソコンやテレビで見た印象とは違うかもしれません。
2時間15分のかぐや姫。一体何がしたかったのか、正直呆然とする映画でした。正直申し上げて「超駄作」です。
(追記) かぐや姫は罪人じゃないといいましたが、罪人でしたね。レビュー後に確認のためにちらちら見返してみたところ誤りに気が付きました。
かぐや姫が月での歌の記憶の話をするところを見てたら「禁断の地(地球のこと)にあこがれ、罰として」とありました。結局罰みたいです。
けど、かぐや姫がなんで感情=穢れとかがなくなる月で地球に憧れたか、がわかりません。
さらに言えば歌は誰向け?歌詞的には、恋愛でも親への愛でもなく自然賛美のような感じですが、かぐや姫が月で何に憧れたのがわかりません。
そして、助けてといえば迎えに来てくれるのはなぜ?そのSOSは月の良さを再発見するということ?この辺は原作とは違う気がします。
この辺りに仕掛けがあるんでしょうか?これ以上の考察はしないと思いますが。
追記2 月の生活や月の人間の脳内がわからないので、なんとでも言いようはあると思いますが…憧れと歌かあ…たとえばアルドノアゼロのアセイラム姫の青い空への憧れとか鳥と言う知識ならすごくわかるのですけど…
追記3 貴族5名の意味なんですけど、これは本作というより竹取物語に寓意が入っているという説があるそうです。
作り物や作り話に騙されそうになる→確認するようになる→真面目に取り組んだ人たちが半身不随あるいは死にそうになり自分の言動を顧みる→人の心を知る…という感じで、かぐや姫がいろんな貴族の取り組みをみて、成長する過程だという意味があるらしいです。
今回、少々竹取物語の方を分析しているサイトをレビューした余韻として見ましたが、そもそもかぐや姫の罪とは不貞だという説もあるそうです。ただ、当時の貞操観念から言って罪というよりも、体裁が悪いのでしばらく身を隠している意味だった、という説があるそうです。
でも、地球で反省したとして、記憶を無くしたら意味ないし、そもそも不貞という概念には感情が必要だと思いますので、うがちすぎな気もしますが。