「小林さんちのメイドラゴン(TVアニメ動画)」

総合得点
93.9
感想・評価
1708
棚に入れた
8219
ランキング
10
★★★★☆ 3.9 (1708)
物語
3.8
作画
4.0
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

世話焼きホームコメディの最高峰

ざっくりと「日常系」に区分してもいいが、仙狐さん然り幼女幽霊然り、独り身の会社員の寂しい私生活を彩る不思議なお世話人────というジャンルは徐々に増加している。メイドラゴンシリーズはその先駆けだ。
創作において、神に次ぐ最強の生物として描かれることの多いドラゴンが女体化し、メイドコスをして中性的なOLに仕える……萌えオタ兼百合ファンとしてこれほど涎の垂れる作品は簡単には見つからない。こう書くと心無い輩から「ああ、また中身のない作品ね」とか言われてしまいそうではあるけどその通りならここまでの人気は出ないわけで……
wikiではコメディ・ファンタジーの他に「異種間交流」という独特なジャンルに属している。この作品を通じて言葉の壁や肌の色、文化圏の異なる相手とのコミュニケーションを取るヒントを得ることもできるのではないだろうか。
できないにしても現代日本と異世界ドラゴン勢の感性・価値観のギャップを弛く明るく表現している所に癒しと面白さが備わっている。

【ココが面白い:最強生物は人間世界に興味津々】
「愚かな劣等種」と見下しながらも自分たちの住む世界とは大違いな暮らしをしている私たち人間に迎合していく最強生物・ドラゴンの強さと人間態の可愛さ、そして懐柔しやすい「チョロさ」によって安心して観ていられるのがこのメイドラゴンシリーズだ。
主人公のメイドとして気ままに働くトール、小学校に通い始めるカンナ、日本のサブカルチャー──専らゲーム──にハマることで結局元ネタと同じく引きこもりがちになるファフニール、特殊な家庭で無自覚痴女系おねショタをぶちかますルコアetc. 個性豊かなドラゴン娘(1匹除く)が多数登場して日常を盛り立ててくれる。各個体が主人公級の魅力を醸し出しており、事実コミックスで独立したスピンオフ作品も出版されていて、どれも面白い。
{netabare}象徴的なのは超能力(スプーン曲げ)に憧れるエピソードだろうか。力を入れず、魔法も使わずに曲げて見せるTV番組に素直に驚き、同じことをやろうと家のスプーンやフォークを(怪力で)グニャグニャにしてしまう。私も小学生の時にやって母親に怒られたな(笑) なんとか会得したくて月刊○ーっぽい本を読み込み明後日の方向へ修行へ……集大成がよくわからないことになっていたけどそこもまた面白く可愛くて良いのである。{/netabare}
物語序盤は気に入らない人間に殺意を向けて爪や牙を密かに出し入れもするトール。その気になれば世界ごと人類を滅ぼせるパワーを持つ彼女が、人間に対して解らないことがあるとそれを必死に理解しようとする。その姿勢が人間であろう視聴者にとってどこか「嬉しさ」を感じて、ほっこりとさせられる。

【ココも面白い:ドラゴンたらしの小林さん】
そんなトールが偏愛する人間が「小林さん」だ。彼女がいなければ本作は物語もその舞台も早々に終わっていただろう。
異形たるドラゴン娘を2人も抱える色んな意味での懐の深さと、ドラゴンたちの疑問に答えては凝り固まった価値観を解す成熟・達観した思考力を併せ持つ彼女には、トールが惚れてしまうのにも理解できる魅力がある。
これまでは独り暮らしの会社員で、素面なら感情の起伏がなだらかというのも社会人オタクにとっては「親近感」が湧くキャラクターだ。ただ働く以外に何も無いわけではなく「メイドマニア」という特殊な性癖で似非メイドのトール(と呼ぶのは真面目に勤めてる彼女に対して失礼だが)を圧倒したりもする。純粋に文化として繁栄した“給仕”としてのメイドへ拘りがあり、現在主流のアキバ系メイドに対しては否定的な意見を持っているのにも、そっち寄りなトールへの当たりはやや厳しい。
しかしそれこそがトールとの関係を「主従」ではなく「対等」にたらしめている。トールがメイドとしてやることはどう見ても「主婦」の家事であり、働きに出る小林はさながら「亭主」である。カンナという小学生の「お子さん」もいる。時にはケンカ(1期ではお弁当対決)もする。成り行きと優しさで寄り合った3人(1人と2匹)が人種の違いに臆することなく、腹を割ったコミュニケーションで血の繋がりよりも強い絆で結ばれ女性だけの理想的な「家族」となっていく様は見ててとても尊い。

【でもココがひどい?:おっっっっっっぱい!!】
個人的にはあればあるほど嬉しい要素だが、人によっては女形の胸部の主張が強いのが気になるかもしれない。
人間態となったドラゴンたちの姿は巨乳持ちが6割を占める。その内、トールとエルマは程よい大きさなのだがルコアはとてつもない爆乳だ。原作者であるクール教信者氏の性癖がよく現れている。
原作者は自称『漫画と乳を描く人』。プロの漫画家であるが、現在でも自身のサイトやpixivでガッツリR-18を含む乳房の大きな女性イラストを投稿する“絵師”としての活動も続けている。本作以外の代表作でも『旦那が何を言っているかわからない件』の嫁が巨乳。『小森さんは断れない!』の小森さんも巨乳。『ピーチボーイリバーサイド』の主人公も巨乳────とブレない信念を持つ。『チチチチ』なんてあからさまな作品も連載中だ(笑)
ただ乳房の大きな女性を描くに留まらず、それで出来る行為(パ○ズリとかパ○パ○とか○合わせですね)や男女の営みまで投稿する作者の変態性は本作ではかなり抑えられているようで実は抑えきれていない。ルコアが動けばその爆乳は京アニクオリティでゆっさゆっさと揺れてパートナーである翔太くんを困らせる。トールは小林への求愛でちょっと行き過ぎた行動を取ることもあり、対して堅物そうなエルマも油断するとレディーススーツを着崩して結構際どい格好をしていたりするので「意識するな」と言う方に無理が生じている。
本当に緩い雰囲気や尊い人間関係のみで勝負している清楚かつレベルの高い日常作品と違い、エロコメディが日常の中に入り込んでやや俗っぽい作りにはなってしまっている。

【総評】
手放しに「名作!」とは言えないが、日常系もエロコメディも好きな男性視聴者を中心に多くの人の心を掴んで離さない良作と評する。
京都アニメーション(以下、京アニ)作品としては『境界の彼方』や『氷菓』の後作になるので、放映当時は画風のギャップに面食らう人もいたようだが、これも原作リスペクトの表れだ。ややエッジのある原作絵に丸みのある線や淡い色彩を添えることで作品にある「萌え」を十二分に引き出している。だからこそ「おっぱい」や「ふともも」もまた量感が凄かったりするのだが(笑) それらもまた原作をより昇華した賜物だろう。
色彩はペタペタと塗ってあるように感じつつも、要所でほのぼのとした雰囲気を残しつつ光の入れ方を変えているようで、やはりこの作品も京アニなんだなと確信できる。メインからモブに至るまでキャラクターの何気ない仕草まで可愛く描写しているため、萌え豚としては観てて一切、退屈しない。
そんな只の萌えアニメかと思いきや、ストーリーは所々に哲学や社会風刺が説教臭くならない程度に織り交ぜられており素直に考えさせられる。ドラゴンと人間の価値観の相違とその擦り合わせ、強種族と弱種族の決定的な種族差を描写することでコメディもシリアスも表現しており、そのバランスもまた絶妙であった。ただ最終話(第13話)では原作にはないシリアス一辺倒となり、そこが原作ブレイカーでもある京アニの悪癖(まあ1つの作品としてしっかり完成させる、という狙いがよく解るアレンジになっているので一概に批判は出来ない)が出てしまったかな、という所感もある。
とはいえ、それ以外ではドラゴン娘のとてつもない力や突飛の無い行動に驚いたり笑ったりもできれば暖かいホームコメディにほんわかと癒される。全体的に様々な“正”の感情を育むことができる素晴らしい作品だ。

投稿 : 2024/04/21
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サンキュー:

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