レトスぺマン さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
これはただの日常系アニメではないね
長文のため本文はネタバレで隠します。
{netabare}
日常系アニメのジャンルで良作と呼べるものには以下3つの種類があると思う。
1.人物の動作などのリアリティを徹底して追求した作品
2.女の子の可愛さに特化した作品
3.登場人物の好きな事(趣味など)と物語のベースとなる舞台をリンクさせた作品
そして、それぞれの内容によって良さは異なってくるものの、誰でもとっつきやすいと思える日常系アニメは3の要素を持つものが多いと感じる。
言ってしまえばそれは「中身のある」ものとして捉えることもできそうだが、その正体とは、
★「趣味や課題を通じて登場人物に良い意味での変化をもたらす」★
★「その趣味自体の面白さや良さの再発見」★
の事であり、この部分が良く描写されればされるほど、登場人物に共感しやすいものとなっていくわけだ。
したがって、本作「バンブーブレード」は趣味や課題が「部活(剣道)」に置き換わったものの、上記に挙げた内容を描く物語が展開され、日常系アニメの枠組みとしては、個人的な評価として上位に属する作品となった。
本作品の良さとは、まず主要キャラクターの描写が緻密であったことだ。
それは、キャラクター自体が個性的であり、性格が被らなかったこともそうだが、誰もが等しく挫折や悩みを経験し、それらを通じて「自分の剣道」を見つけるストーリーの流れに影響したことだ。
「自分の剣道」と一言にまとめたが、部活としての剣道への向き合い方、部活をいいものにしていくこと。
つまりここでは「仲間意識」が大きなポイントになってくるのだと思う。
だとすれば、仲間同士で切磋琢磨するのもいいし、特別な友人を得ることに繋がっていく可能性もあるわけだ。
そんな理想的な部活の楽しみ方が本作では至るところで描かれており、それを緩い日常ストーリーにさりげなく盛り込むことによって、非常に見やすい展開となっていた部分が本作品の最も素晴らしいところだといえる。
また、どのキャラクターも完璧ではなく、時折見せる色んな意味でだらしない描写の数々は笑えるもので、これも視聴欲を増加させる一因となったが、そのだらしない部分が上述した「挫折や悩みの経験」とうまくマッチして、結果的にはキャラクターにさらなる好感を持つに至ったと思える。
特に、鞘子や聡莉からは他の趣味に目移りしやすい、努力をしても空回りしてしまう、という性格がクローズアップされていたが、強く出すぎている部分はあれども、等身大の人間が持つような悩みによく似ているような気もしたわけだ。
それをどのようにしていい方向に持っていったのかといえば、これは他のキャラクターにも該当するが、「ある人物の欠点を他の人物の良さでしっかりとカバーしている」ことなのだと思う。
それが、間違ったことをしても謝るだとか、感情的に暴走したキャラクターに優しくストップをかける、といった描写に繋がっていたことは明らかで、この辺りは気持ちよく見れた部分ではあったし、ここから、各々が自分にとってのライバルという存在を見出していく展開は、王道的とはいえども胸に迫るものがある。
いい部活にしていくことのもう一つの条件として「指導者に恵まれる」ことが挙げられるが、これについてはコジローのキャラクターも見どころの一つで、最初はふざけた動機で顧問になったものの、周りから影響されて、剣道への楽しみを見出していく展開は見ていて気分のいいものだったと思う。
また、スポーツというとどうしても「競技的スポーツ」の意味が先行してしまいがちではあるが、「生涯スポーツ」の場合、年配の人でも楽しめるゲートボールのように、誰でも気軽に参加できる間口の広さや、雑談しながら嗜む方が重要であったりすることもある。
それを踏まえれば、コジローの適当さもここに繋がるような気がして、それが物語の面白さそのものとなったし12・13話のような考えさせられるストーリーも興味深く見れてしまう良さがあったわけだ。
そして、ライバル校との対戦、休部騒動などのトラブルはあれど、物語は大円団の結末を迎え、最終話での新入生・忍が「変な部!先輩も後輩も先生もごっちゃでみんな友達みたい!」というセリフを放ったが、これこそが全26話の象徴ともいえるような気がして、見終わった後は晴れやかな気分に浸れたと思う。
本格的かつリアリティのある剣道描写はあまり見られなかったり、2期がありそうな締めくくりを迎えているのを見ると、中途半端の意味で最高評価を付けるのには少しもの足りないところではある。
ただ、それを差し置いても部活の面白さを全面に展開して、誰でも楽しめるような話になっていたところは、素直に高く評価するべき点だと思えたし、逆に頭を空っぽにしてキャラの可愛さに浸るだけでもいいわけだ。
そして、演出においてもキャラクターになにかしらの心情変化があった場合に、「目」の部分アップにするなど、これは剣道の試合のシーンでは真剣さが伝わった来るものではあったし逆に気の抜けたところはデフォルメ調&白目にするといった工夫がなされているところも面白かったと思う。
やはり、本作品は日常系アニメの枠組みの中に属するものの、中身は気持ちの良い青春譚のようなもので、改めて今後、より多くの人に薦めたいと思えた。
{/netabare}