てとてと さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
本命はエロよりも価値観の多様性賛歌
ニコニコ静画の漫画原作で、ファンタジー異世界を舞台に、多種族の性風俗嬢たちをレビューしていく、お下劣な内容。
※作品データベース様より転載
【良い点】
性風俗のレビューという尖った題材。
それだけでは低俗過ぎて不快な題材、これをファンタジーとして一つの作品世界を構築して見せている。
主人公たちが誰憚る事無くエロ道に邁進していく姿勢はいっそ清々しい。
後述の世界観構築も含めて明るく楽しくヤっちゃおうな気風を貫徹。
主題歌や締めのオーキナ博士などなど、娯楽作品に徹している。
エロアニメにしない為の演出の工夫、これでコメディーアニメとしてどうにか成立させていた。
ハイファンタジーとしての世界観構築が侮れないレベル。
法律の抜け穴としての「サキュ嬢」(サキュバスという種族にだけは風俗行為が公認されている、他種族もサキュバスの血が入っている、という口実作り)に始まり、魔法による避妊や性病対策など、徹底的に「気兼ねなく性風俗レビューしまくれる舞台設定」を積み上げている。
ファンタジー、というよりも創作作品全般に言える、○○がしたい、させたいが為の設定作り(例えばガンダムでチャンバラさせたいが為のミノフスキー粒子とか)を、かなり理詰めで構築しているのが本作の凄さ。
本作の世界観構築はエロに留まらず、経済や政治や文化方面までも広がりがあり、例えば2話での選挙戦での各種族の公約が非常に興味深かった。
現実には存在しない異種族たちの文化や価値観の差異を絡めていき、それが世界観に深みと愛着を感じさせてくれる。
エロに関する種族間の価値観の相違が興味深い視点。
例えばエルフ男子から見れば人間の老女は若くて魅力的、(我々も含めた)人間から見れば魅力的な不老の美女エルフが多種族からすると「オカンより年上の女」「マナが腐っている」と敬遠されるなど。
9話でのゼル(エルフ)と伯爵(ヴァンパイア)との長命種ならではの価値観を垣間見せる会話シーンなど、随所に(その発想は無かった)と思わされる。
こういった価値観の相対化視点はエロ以上に本作の世界観に魅力を感じさせてくれる。
また、多種族共存共栄の理想郷を構築しているのも本作の魅力。
スタンクらが遠慮会釈無くレビューしたり、多種族へのネガティブな印象を正直に言い合う。
…現実世界だと差別や軋轢を生みかねないところ、互いに遠慮の必要なく平和的に共存できる世界というのは羨ましい。
現実では決して到達し得ないであろう真の多様性は、空想の異世界ファンタジーにしか無いのかもしれない。
現実では不可能だからこそのファンタジーの醍醐味であり、本作は真なる理想のファンタジー…かもしれない。
異種族とのエロに関してもキレッキレで、現実の人間では絶対に不可能なシチュエーションのオンパレード。
その発想は無かった…の連続、特にサラマンダー娘(全身常に灼熱している)の焼肉プレイは度肝を抜かれた。
更に7話の産卵ショーは圧巻過ぎた…
キャラクターも魅力的、レビュアーズの面々は勿論、サキュ嬢ではないメイドリーちゃんが一番可愛かった。
個性的過ぎるサキュ嬢たち、レギュラーモブですらキャラが立っていた。
クリム君やメイドリーちゃんらのやりとりがコミカルで楽しいのも良かった。
【悪い点】
幾多の放送局や配信サイトで停止を食らった危険性…については、別に。良かろうなのだ!
エロ萌えアニメとして見ると「意外に使えない」
キャラデザは悪くないけれど良くもない、肝心要のエロシーンも規制だらけ(当然だけど)。
仮に規制が無かったとしても、人間(自分)にはマニアック過ぎて、エロ萌えというよりは(勉強になりました…)な感じ。
正直エロ萌え目的としては、ラノベ原作アニメの方が断然好き。
…ただし、本作のコンセプト上、これは必ずしも欠点にあらず。
本作の見所は興味深い世界観構築にこそあり、エロはその構成要素に過ぎない。意外な事に。
【総合評価】9点
低俗な作品なのは確かだけど、本命はエロではなくファンタジーによる価値観の多様性と見る。
こういう発想の作品を生む作者がいて、評価する読者(視聴者)がいる、
そしてアニメ媒体で放送に漕ぎ付けたこと自体がある種の偉業である。
日本の創作文化の強みは自由奔放な発想力と、それを許容する懐の広さだと思うの
評価は最低付けられても是非も無いところ、自分は顰蹙買ってでも「とても良い」付けたい。
【余談・他の異種族アニメとの比較】
同時期の「ソマリと森の神様」が人間と他種族双方の狭い価値観の対立による悲劇を描いていた。
創作作品には現実の厳しい側面を反映させる作風と、現実は厳しい故に理想化する作風あり、前者がソマリ、後者がレビュアーズといえる。
(ソマリ終盤を見て、レビュアーズを見ると、ああ、レビュアーズ世界っていいなぁとしみじみ感じる)
2017秋の「セントールの悩み」も他種族による文化や価値観の相違を題材にした意欲作、こちらはレビュアーズ的理想郷要素ありつつ、ソマリのような現実風刺路線もあり。
現実とは異なる異種族による価値観の相対化という視点で興味深かった良作。
対し2015秋の「モンスター娘のいる日常」は異種族とエッチする路線、こちらの方が(人間視聴者的に)とっつき易いエロ萌え提供してくれる一方で、
価値観の相対化の面白味はセントールやレビュアーズほど重視していない。
奇抜に見えるが割と普通の萌えアニメ。