「PSYCHO-PASS サイコパス2(TVアニメ動画)」

総合得点
84.8
感想・評価
2438
棚に入れた
13709
ランキング
273
★★★★☆ 3.8 (2438)
物語
3.8
作画
3.9
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
3.7

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nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

テーマ的不満はありますが、1期より圧倒的に面白いです。

 私は1期については、シビュラシステムの正体と犯罪係数の意味に納得感がなかったので、テーマ性およびSF設定としての深さに関してはあまり評価していません。

 本作については、1期で感じた設定の違和感を保留して、そういう世界観だという前提でみると、かなり話としては作り込まれている優れたストーリーになっていると思います。

 ストーリーはいくつかのラインがあります。カムイがやっていることで、犯罪係数とドミネーターについてです。犯罪係数が下がると言う事実。監視官の誘拐があって、目玉の手術で監視官の身分を乗っ取る。ドミネーターで監視官が殺せるかを実験。ドミネーターを複数奪う。

 次にカムイの正体で、シビュラシステムに認識できない人間の作り方。事故とホロ、医療機関へのもぐりこませ方。そして人体部品の調達方法。シビュラへの復讐のためにステップを踏んでいきます。

 シビュラ以前のパノプティコンという設定は上手く考えました。システムに復讐したい実行部隊の描き方に役立ちました。

 常森に対して、シビュラシステムと最新の医療を代表する東金母子がどうやって話に絡んでくるのか。
 おそらくシビュラシステムが免罪体質で構成されているという部分をクローズアップしすぎると話が成立しなくなるので、常森を黒くできるのか?東金VSシビュラの攻防にいつの間にか置き換えれれてます。


 こういった、それぞれの流れ・エピソードが絡み合い、11話の間まったくダレずに話が展開します。
 近未来のサイバーSF警察もののエンタメとして、ストーリー自体は出色の出来でしょう。正直1期よりも話の出来は圧倒的に面白いです。出てくる会話やセリフにほとんど無駄がありません。
 


 ただ、不満な点です。

 常森とは何か?がやはり描けていません。つまり、犯罪係数の意味が描けていないということです。祖母が殺されても曇らない常森のマインドの正体です。常森の遵法精神の根拠もわかりません。

 数値、情報によるAI監視社会のような、サイバー的な恐ろしさは十分描けていますが、常森の色相がなぜクリアなのか?健全な精神とは?つまり、シビュラシステム・犯罪係数の逆説です。ここが描けていないので、テーマ性が浅くなっています。
 タバコを吸うという設定…実際は吸わずに「焚く」…つまり狡噛への依存なんでしょうけど、彼女の色相がクリアという設定と矛盾がある気もします。まあ、頼れるものは素直に頼るという意味ではいいんでしょうか。なお、常森のシャワーシーンは萌えます。
 

 カムイと東金という対照的な存在を配置することで、あるいは雑賀まで含めて、犯罪係数と常森のアウトラインを見せようとしています。陰謀としては面白いし霜月の滑稽さが際立ちましたが、テーマ的に深みが出たかです。

 後はカムイの存在が、アイデンティティとはなにかとか、医療と人間のような何かを描けているか?です。下手をすれば「スタンドアローンコンプレックス」の「笑い男」そのままです。
 その他「悪魔の証明」「全能者のパラドクス」などの問いを仕掛けてきますが、あまり効果的にテーマ性を産みだせていません。つまり、こういった問いはギミックどまりの気がします。

 身体のパーツの集合体という視点の持ち方は面白いですが、なんとなく設定倒れの気がします。脳みそ…あるいはゴースト問題です。集合的サイコパスとカムイは全く異質なものの気がします。

 この作品でいうところの集合の問題ってどうなんでしょうね?犯罪って集合体の道徳観・価値観そのものだと思いますが、その集合体が犯罪を犯す?うーん。シビュラの否定につながっているようないないような。シビュラ自身が集合体じゃないの?と。本来ならシビュラ側が到達する発想の気がします。
 常森の遵法意識に絡んできますが、今のところ言葉遊びで終わっている気がします。いろいろ参照しながらちょっと考えますが…
 テーマ的にはアシモフの「ロボットと帝国」でダニールオリバーとジスカルドのロボット三原則に関する議論で、第零法則という人間の上に人類という定義を置いた話のスケールを小さくした感じでしょうか。

 パノプティコンという交通システムへの復讐をシビュラにすることで果たせるか?という部分はあります。政府・役人に対する復讐ならわかりますが。交通システムを話に巻き込むことで都市の脆さを描きましたけど…これはドローンの部分もそうですね。

 それと全編を通じて東金=シビュラだったのは、設定として正しかったでしょうか?ときどき入れ替わるんじゃなかったでしたっけ?もちろん、2期だけの話を優先したのでしょう。

 霜月が反発するのはいいのですが、もっと冷静で頭がよく描けなかったかなあと思います。一般的な市民の代表として配置されているんでしょうけど、監視官に付ける時点で不思議です。そして霜月の犯罪係数が健全なのが不思議です。


 とまあ、いろいろ不満点はあります。1期の免罪体質とシビュラシステムの関係がシリーズ全体を歪めている気がします。
 が、本作は本当に設定・伏線が絡みあい、キャラが良く動いていました。エンタメとしては最高の出来でしょう。ただ、やっぱりテーマ的な深さが物足りないです。

 それと思っているより、作画良くないです。

 エンタメとして評価は高くつけます。ただ、テーマ的な部分では不満が残るシリーズだなあと思います。

投稿 : 2023/06/23
閲覧 : 164
サンキュー:

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