nyaro さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
迫害の中でも自分らしく生活する少女の描写が胸を打ちます。
本サイトの放送時期は1970年となっていますが、キービジュアルにアンネフランク生誕75年記念とあります。アンネフランクは1929年生まれですので、この作品は1995年のアンネの日記でしょう。キービジュアルは2004年にDVD発売したものだと思います。
この作品はアンネの日記のほぼ忠実な再現です。アンネの少しお転婆な、苦境の中でもおしゃれをし、皆の前で夢を語り、そして恋までする思春期あるいは思春期前の少女の日常が良く描けています。
と同時に、それを取り巻く恐ろしい状況。隠れて暮らさなければならない、世界最大の人権侵害の1つであるナチスによるユダヤ人迫害の恐怖と絶望がアンネに迫ります。
私はこのアンネの日記を読んで、ホロコーストって本当にあったんだなあ、と深く納得した記憶があります。さすがにこのリアリティは創作・捏造ではないだろう、と思います。
ホロコースト陰謀論もありますけどね。その辺は都市伝説で遊びの範囲でとどめた方がいいでしょう。本当は遊びでもすべきではないでしょうが。
本作はアンネが連行されるところまでですが、確か実写映画では日記を離れてアウシュヴィッツまでも描いていたものを見たことがあります。裸にされて髪を切られるシーンや、狭い部屋で病気に苦しむ人々の描写にトラウマになりかけた記憶があります。
作品ですが、アンネフランクが活き活きと描かれています。わがままなところもありますが、年齢相応の普通の女の子です。
背景美術やキャラデザがとても丁寧です。映画の方がリアリティがあるかもしれませんが、アニメという抽象化をすることで役者ではないアンネフランクが再現できており感情移入がしやすいとも言えます。
なお、本作品は転載利用可らしくユーチューブに乗っています。もちろん日本語版で見ましたが、英語版もあります。そして、英語版は700万回以上再生されており(23年6月現在)、コメントが1万件以上ついていました。
コメントの内容は、アニメの出来そのものと、この作品を作った意義のどちらかをほめたたえるものが多いです。隠れ家の生活などかなり正確に描写されているとのこと。つまり、当時を知っている人も感心するレベルの出来なんだと思います。
アニメは本当に美しいし音楽も素晴らしいのでそれだけでも、一見の価値はあります。
夏といえば太平洋戦争に想いを馳せる時期です。わずか100分程度の映画ですので、ちょっと離れてヨーロッパの第2次世界大戦を振り返るのもいいでしょう。ヨーロッパ版の「とある世界の片隅で」ただしバッドエンド版という位置付けもできるでしょう。
可愛そうな話ですが、戦争を知らない私にとっては、そういう歴史的事実を消化することで、少しだけ自分の内面が豊かになった気がする作品です。
文学作品あるいはドキュメントとも言えますので、ストーリーもキャラも評価はできあません。
まあ、思想的な部分もありますので評価せずの意味でオール4にしておきます。さすがにオール3というレベルの出来ではないので。