蒼い✨️ さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ひとりひとりが主人公。
【概要】
アニメーション制作:P.I.C.S.、OLM Team Yoshioka
2021年4月6日 - 6月29日に放映された全13話のTVアニメ。
監督は、木下麦。
【あらすじ】
家族がいない41歳独身の個人タクシー運転手の小戸川宏。
彼は東京住まいで渋谷や新宿などで客を乗せている。愛想の無い彼は、
ときには行きつけの居酒屋でママを相手に会話しながら飲み食いをしている。
また、不眠症であるのと小戸川の目に見える世界が他人と全く違ってるため、
個人病院に通院している。友人が少ないながらもそれなりに楽しく生きている。
その小戸川のタクシーの乗客であるいろんな職種の人々、そして小戸川自身が、
ニュースで報道されている練馬の女子高生失踪事件に絡んで、
繊維を束ねたロープのように繋がっていくのだった。
【感想】
ミステリーで引っ張って物語の続きが気になるタイプの群像劇。
面白いこと言ってやろうとのくどい台詞回しがやや鼻につく傾向がありますが、
そこを否定しちゃうと作品の良さも全否定になってしまいますね。
お笑い芸人を多数起用したネタだらけの軽妙な会話が持ち味のアニメですね。
シュールさが強めの会話の何気ない一言、背景にある小物が実はこうだったなど、
伏線がいたるところに散りばめられていて、それが回収されていくのは、
考察好きのアニメファンにウケそうなスタイル。
擬人化された動物のビジュアルで『100日間生きたワニ』かよ!?
と最初は敬遠しそうになりながらも、
実際に観てみたら全く違っていて、チュンソフトの『街』『428』みたく、
学生やアイドルなどの芸能人や警察の人や反社など登場人物のひとりひとりが、
それぞれの人生の主役であって、それぞれの視点で物語があって、
繋がりのあったり無かったりする個々のキャラクターの決断や偶然が、
相互に作用して複雑に積み重なってラストまで繋がっていく、
ヒューマンドラマとサスペンスでありネタバラシのターンでは衝撃の展開もあります。
また、最終回のクライマックスに該当するアレが『街』のラストの花火と役割が一致していて、
脚本の此元和津也氏は、『街』をプレイしてないですか?と断定しそうになりますね。
動物の擬人化キャラのアニメですが、仮にリアルな人間を描いてる作画でやったら、
18歳の小娘に入れあげて金持ちだと嘘をつく41歳の貧乏な禿げたオジサンの話であるとか、
事件の真相に迫る回想シーンでのエグさとか、見るに堪えない部分が一部にありまして、
デフォルメ化された動物のビジュアルだからこそセーフであったりでして、
また。キャラクターが人間でなくて動物であることにも意味がありまして、
その種明かしからの不穏さを残すまでのエピローグの構成が上手かったと思います。
本編を見てるだけでは解らない部分もある御都合主義的さも部分的に存在する脚本ですが、
そこは小説やオーディオドラマなどで補完すれば良いのでしょうか?
拾った拳銃で人を撃っておいて銃刀法違反と殺人未遂に問われることもなく、
社会復帰してるキャラがいたり、
作中ではスルーされているのですが、来年の4000万円近い所得税が待っていて、
支払い能力が無いとネットで考察されているキャラがいたりでして、
現実と照らし合わせると、この終わり方で良いのかな?と思わないでもないですが、
小戸川の物語の終わり方としてはめでたしめでたしで順当でしょうか?
と言いつつも最後の最後で不穏さを残すシーンで終わり、その続きは映画までお預けですけどね。
個人の好みで言うとキャラデザで一見敬遠しがちですが、
懐かしのサウンドノベルみたいな構成のストーリーを、
アイドルとファンの距離感の近さとかソシャゲ中毒者の凶行などの、
令和の世相?をネタとして絡めてまとめあげた良作ではあると思います。
未見の人がいましたら予備知識無しで予測不可能な状態で楽しむのが良いと思いました。
これにて、感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました