「小公女プリンセスセーラ(TVアニメ動画)」

総合得点
67.9
感想・評価
108
棚に入れた
446
ランキング
2297
★★★★☆ 3.7 (108)
物語
3.8
作画
3.5
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.7

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ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 1.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 2.5 状態:観終わった

「おしん」が流行ってた昭和時代の私不幸だわ系?名高き名作かもだけど大嫌い

世界名作劇場11作目。大富豪のお嬢様が父の訃報で落ちぶれて、イジワルな連中から虐げられるお話。全46話。
※作品データベース様より転載

【良い点】
ハッピーエンド大勝利なので、途中経過が辛くても終わり良ければ、ではある。
四悪人どもに制裁をしないのも、そういうカタルシス期待する作品ではないと好意的に見ておく。
学園寄付も、ベッキーの身受け代とも取れるし?
途中経過で不遇期間長いが、セーラとベッキーらのささやかな幸せが四悪人にいつ潰されるかのハラハラドキドキ感は飽きさせなかった。
陰湿なイジメや不遇はコンセプト上、お楽しみポイントでもある。
不快さは否めないが、不遇に耐える美少女に萌えるのも強いて言えば愉しみ所ではある。

セーラはキャラデザと声だけは美少女。
名作劇場らしい作画や楽曲のクオリティーの高さ。

金持ちな時も不遇な時も一貫して他者に優しく、健気に耐えて頑張り抜いたセーラの聖女っぷり。
セーラよりも、一貫してセーラお嬢様を慕い親身に接したメイド少女ベッキーが非常に可愛い。
聖人というか人形のように人間味に欠けるセーラよりも、ベッキーの方が遥かに血が通った善良さがあった。
セーラとベッキーの不遇なふたりのユウジョウこそが本作の数少ない救いであった。

悪人は徹底的に悪人という明快さ。僅かでも良いところもある、的な逃げ道が一切無し。
ミンチン理事長のキャラ描写は特に徹底している、金で態度が変わる汚い大人だけど、そうなってしまった理由が40話で明かされ
若い頃貧しい境遇で妹アメリアを育て上げ教育し(両親亡くしてる?)学園理事長にまで上り詰めた。
それで金が全てだと性格が歪んだ悲しき人であった。
しかしそれで同情かうような作劇は一切無く、終盤セーラの境遇が復活して以降の滑稽なまでの狼狽ぶりで見事な反面教師を演じ切った。
本作のコンセプトとして、金や地位で厚遇冷遇変える醜さを聖女セーラとの対比で分かり易く描く、この点は良くも悪くも徹底していた。
最終話、セーラに厚意くれた人々が軒並みセーラからの恩返しでハッピーな結末も露骨に分かり易い。

本作はドラマ「おしん」よりも童話の「シンデレラ」の構造に近いと見る。
ヒロインがひたすら耐え忍び、魔法使いの助力と王子の後見を得て大勝利エンド。父の友人が露骨に魔法使い言われてたし。
西洋童話でなくても日本昔話でも、善人が報われるのは普遍性あり、小公女セーラは古臭いタイプの作劇ではあるが、ナシではあるまい。
古典的な童話を長編アニメに落とし込んだと見ると、深みに乏しい露骨な登場人物の配置もまあ納得できる。
厨房夫妻は嫌な連中だけど特に思うところは無い。

教養が身を助く、名作劇場の主要テーマの一つは抑えている。

40話のハロウィンパーティーの趣向が19世紀イギリスの文化風俗的に興味深い。
ラビニアの取り巻きのポッキーゲームぽい百合が見られた。

【悪い点】
46話のうち不遇期間が長すぎて大変苦痛。43話でようやくハッピーに向かうが遅すぎる。
フランダースの犬でさえ、終盤までは割と牧歌的な雰囲気だった、対しセーラは殆ど心休まる暇なし。
イジメについてはコンセプト上許容範囲だけど、展開が単調で辟易しがち。

セーラが無機質な聖人人形で共感しづらい。
イジメ不遇路線の先輩なキャンディキャンディのヒロインは十分魅力的だった、対しセーラは魅力が乏しい。
金持ち坊ちゃんの無邪気な施しで惨めな気持ちを知りながら、結局自分も同じ事をしちゃってたり。
ここら辺は本作の脚本に信念が欠けていた感。他の名劇には確固とした高潔な信念がある。

金や身分により待遇が変わる醜さを反面教師で見せる、というコンセプトは悪くはないんだけど、
結局は金や実力者の後援がモノを言う感じになってしまっているのは疑問符。
セーラ自身の善意や努力は一切報われず、金や運や権力持つ者に左右される…物語としては大変つまらない。
こういう古典的な作劇は童話のような短編ならば許されるけれど、本作は46話もの長編なのが構造的な欠陥だと思う。
原作の短編を薄く引き伸ばし、(当時の)日本人好みに脚色した結果が、歪な童話になってしまったか。

セーラに優しくてくれる金持ち坊ちゃんとか、父の友人が内密に支援したり(却ってセーラの立場悪化)、
金持ちの無邪気な善意が鼻につく。
私のあしながおじさんのジュディが凄まじく嫌悪しそうな作劇だった。(最終話後セーラに施されたジュディ激怒するクロスオーバー妄想)
好意的に見ると、結局は金、というのは穿った見方で、主題は「金や力を持つ者はその分他者に優しくすべき」なのかも知れない。
ただ、どうにも卑しいリアリティーがあって、やっぱり世知辛い作品だなぁと。
リアリティーがある事は物語としては興醒めでもある。

アメリア先生、アーメンガード、ロッティらの役立たずな善人たちがウザい。ミンチンとラビニアの方がキャラとしては面白い。
好意的に見ると、とてもリアルな世間の縮図かもしれないが、物語としては面白くない。
中盤辺りアーメンガードらと交流するエピソードは良かっただけに、それが結局あまり活かされないのが却って面白くない。

ミンチンとラビニアについては、もう少し掘り下げて人物に深みがあれば一段評価上げていた。
正直、不気味な聖女セーラよりも、ミンチンとラビニアの方がまだ人間味があるので。
ミンチンについては40話みたいなエピソードが結局活かされなかったのは残念。
ラビニアはラストまでプライド捨てなかった女傑で自分は一目置いている。
ラビニアは39話で「セーラが落ち目でも堪えないのが気に食わない」と心情の一端を吐露しているが、
この辺の掘り下げがもっと欲しかった。
人物描写に関してはフランダースの犬の方が深みがある。(コゼツ旦那とか実は悪人ではない)

【総合評価】2点
良くも悪くも(自分の好み的には悪い)古臭いタイプの童話作品。
小賢しく考えずに素直に古典的ドラマを楽しめる視聴者向き。
主人公は自らの意志と能力で困難に立ち向かうべし!という近年(といっても既に100年以上経過している)
の主流から時代遅れなんだけど、時代遅れだから全くダメという事は無い。
と割り切ってみると、名作ではある。時代遅れの名作。
評価は悩むところ、時代遅れとはいえちゃんとしたメソッドに則った内容なのは理解はするが…
「とても悪い」

投稿 : 2023/06/17
閲覧 : 140
サンキュー:

2

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